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中国文学映画関連 備忘録

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現代中国文学翻訳研究会/訳『ラブレター』収録作2

『ラブレター』には、現代中国文学翻訳研究会によって翻訳された80年代中国女性作家の短編小説が収録されています。


張玲「帰来」 1981
明生といううぶな青年は、成叔母に紹介されて秀秀という女性とお見合いしようとしますが、靴が壊れたため、老人のもとで靴を直していたら時間に間に合いませんでした。その後、二人はついに会いますが、明生が秀秀に父親のことを訪ねたため機嫌を損ねてしまいます。その後、明生は叔母にすすめられて、秀秀に靴を贈ります。二人は仲良くなりますが、明生の靴が壊れて老人のもとに靴を直しにいくと、秀秀は老人を避けて逃げます。老人は秀秀の不憫な父親でした。明生は怒り、秀秀から靴を取り上げて、靴を返してお金をもらい、老人にあげます。その後、明生と秀秀はたまたま出会い、そのとき秀秀は、老人が秀秀にお金を与えたといいます。明生は二人の関係の回復と幸せを感じて、秀秀に老人を迎えに行こうといいます。

山東省文学創作賞および《山東文学》賞の受賞作。童話のような小説。


喩杉「女子大生寮」 (《女子学生宿舎》)1983
大学に入学した私、夏雨の物語。寮の天井には黒い穴があり、不格好なベッドと机に占められた部屋でした。私は女子学生の集まる寮で日々を送ることになります。同室なのは、元気で飾り気のない駱雪、有能で勤勉な室長といったかんじの宋歌、市長の娘でわがままな辛甘、誰よりも美人である匡筐です。宋歌と辛甘はことあるごとに対立します。

ある時、奨学金の評定がおこなわれます。奨学金を申請したのは、宋歌と匡筐でした。その後、私は、偶然匡筐が必死にレンガを運ぶバイトをしていることを知ります。その後、宋歌が匡筐を罵っているので私はうっかり匡筐が苦学していることを言います。その後、偶然、学長が私たちのもとにあらわれて、寮の部屋が問題を抱えていることを理解して謝ります。また、宋歌は匡筐に謝り、自分の家庭は経済的に悪くはないと告げて、自分の奨学金をことわって匡筐の奨学金にあてます。その後、宋歌の誕生日を皆で祝い、家族を紹介しあいます。駱雪が大臣の後妻の娘だということなどが明らかになります。以後、私は匡筐と二人きりの時、匡筐のはなしを聞きます。父親は有能な小説家であり、母親と結婚して匡筐が生まれましたが、その後母親は大学に入学して帰らず、父親は生活に苦しんで筆を折り、さらに母親が父親を陥れたため父親は山林に下放されます。匡筐は、その父親のあとをついで小説家になりたいと思ったのでした。そして、その後妻は、おそらく駱雪の母親だと暗示されます。

非常に華やかな小説。


「嫁ぐ日近く」(《女儿就要出嫁》) 余未人
玫玫が結婚する前の最後の日曜日から物語は始まります。物語は、玫玫の母親の視点から綴られていきます。玫玫の母親はかつて外国文芸の講師でしたが、文革の結果、ある資料室に勤めるようになります。そして、いま復職申請書を書くべきかどうか迷っています。

玫玫は母親の束縛を嫌う自由闊達な娘であり、バスの車掌をしています。娘は、バスの料金を払わない男と出会います。ある時、男がひまわりの種をまき散らすので、玫玫は怒って、「切符を買って下さい!」といいました。男が10元をだしたので、玫玫は、小銭を山のように出して、9元89銭を返しました。その後、男は改心したのか切符を買うようになりました。玫玫の母親はある時、病院へ診察に行くと入り口で倒れますが、ある青年に家まで運ばれます。その成年は、謝達といい、本をよく読む人物のようでした。母親は謝達に感心しますが、玫玫から謝達こそがバスの料金を払わなかった男だ、と聞いて、謝達を警戒します。しかし、玫玫は謝達に惹かれていきます。

玫玫の母親は文学研究者、父親は音楽家でしたが文革で父親は「右派」のレッテルを貼られて、病で死にました。だから、玫玫の母親は文化全般に近付くことを恐れますが、玫玫は謝達に影響されて文化を学ぶようになります。そして、玫玫の母親も、謝達と話している内に、文革以前の文化を封印してきた自分は間違っていたのではないか、と思います。
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現代中国文学翻訳研究会/訳『ラブレター』

『ラブレター』には、現代中国文学翻訳研究会によって翻訳された80年代中国女性作家の短編小説が収録されています。

今回のテーマは若者だそうです。

王浙浜「ラブレター」(《情书的真情》)1980年
鉱山における、あるラブレターをめぐる物語。孟凡江という青年が偶然拾ったラブレターを周囲の人間に向かって読み上げていると、
秦広有がそのラブレターを取り上げて、年老いた鉱長兼党委書記の梁樹に渡します。梁樹のもとに、杜秋雲という女性が現れて、それは王殿竜という成年から届けられたものだと言います。そして、彼女は、王殿竜のことを愛しているが結婚しても経済的な展望がないのであきらめている、と泣きながらいいます。翌日、会議の時、梁樹は、周囲の人間に対して、壮年の男女が結婚できないことは問題であり、彼らの結婚のために努力しよう、と皆に向かって告げます。秦広有はラブレターなどはいやらしいものだと反論します。しかし、梁樹は、ラブレターはもともとマルクスの文章だと告げて、恋愛は正当なものだと述べます。

張潔「より美しく生きる者」(《谁生活得更美好》)1979
施亜男、呉歓は1176号バスの女性車掌に惹かれます。その車掌は、「とてもひ弱で、か細く、まるで乱暴に扱われたことのないガラスの人形のよう」でした。
呉歓は育ちが良く、男前です。施亜男は文学青年であり、田野という詩人に憧れています。呉歓は車掌の気を引こうとして様々なことをします。そして、最終的には恋文まで届けようとしますが成功しません。そして、最終的には、お金を払ったのに払わないふりをすることによって言い争います。施亜男は、その車掌のことを、憧れている詩人に告げにいこうとします。そして、その詩人の家を訪ねると、あらわれたのは、あの車掌でした。施亜男は予想外だったのですぐその場を去り、もうバスには乗りません。そして、もっと近づくできるようになれたら、訪ねに行こうと決心します。

王小鷹「香錦」1981
ある純朴なお手伝いさんに関する物語。上海に住む私の家に、農村の娘・香錦がお手伝いさんとして来ます。香錦は月三十元の給料で、兄と嫂の間に生まれた宝宝の世話や一家の雑事全般を行います。私の母と私は香錦を気に入っていますが、嫂は香錦を蔑んでいて、私と嫂は対立しています。ある日、北京大学で学んでなかなか家に帰らない次兄が帰ってきます。そして、香錦が次兄を慕っているようなので、家族は心配して、香錦を解雇することにします。すると、次兄は「香錦は愛する人と結婚するため、結婚したくない家から受け取ってしまった結納金を返そうとして働いていたんだ」という香錦から聞いた事実を皆に告げます。私は疑ったことを詫びて、香錦に五十元のお金を貸しました。香錦はほぼお金がたまったので、元気に別れを告げて、里に帰っていきました。

宮尾正樹・監修『紙の上の月 - 中国の地下文学』収録作品3

『紙の上の月 - 中国の地下文学』は中国でもともと地下文学とした発表された短編小説を収録したもの。


「飢餓」 《饥饿》尹明1979・大西陽子翻訳
劉斌という気弱そうな青年の物語。文革の頃、有害な書物は禁じられていました。劉斌の姉は読書好きでしたが、言いがかりをつけられて迫害されています。劉斌は、ある中年男性からジャック・ロンドン『生命の愛』をもらい、喜びます。その後、学校の図書館の本が次々と破棄されていることを知り、本を救おうとして深夜忍び込み、持ち出します。その後、正直でありたいと思い直して、その罪を白状します。結果として、拷問を受けて正気を失います。そして、紅衛兵となって家に舞い戻ってきます。

 「多国籍アパート」《人堆人》劉索拉1990・西野由希子翻訳
ロンドンのアパートに住んでいる私の物語。下の部屋に引っ越してきた人が大音響で謎の音楽をかけるため、私と周囲の人たちの交流が始まります。

「悲しき六月」 《如泣的六月》葉曙明1990・宮尾正樹翻訳
さまざまな断片がかき集められたかのような小説。要約が困難です。非常に中国らしさを感じさせない小説。

 「瞬間」 《瞬间》高行健1991・宮尾正樹翻訳
さまざまな断片がかき集められたかのような小説。要約が困難です。

高行健の書いているような小説に関して、分析することはなかなかに難しそうだと感じます。

宮尾正樹・監修『紙の上の月 - 中国の地下文学』収録作品2

『紙の上の月 - 中国の地下文学』は中国でもともと地下文学とした発表された短編小説を収録したもの。
「紙の上の月」《稿纸上的月亮》北島1980・西野由希子翻訳
小説家・丁玉龍の物語。丁玉龍のもとに、小説家になりたいと望む若い娘が現れますが、丁玉龍は小説家にならない方が良いと忠告します。丁玉龍の周囲には、妻の娟、息子の冬冬、友人の康明、出版を助けるじいさん、ばあさんなどがいて、生活は営まれていきます。
「僕たちの夏」《没有太阳的角落》史鉄生1980・栗山千香子
身体障碍者の僕、鉄子、克倹は、日々、官女を描いています。三人は世間から差別されていることをよく理解していますが耐え抜いています。その三人のもとに王雪という少女のように純粋な女性があらわれます。三人と王雪はいっしょに映画を見に行きます。しかし、王雪は正規の仕事を手に入れて去っていくことになります。

「雪 -遠い風景」《远方 -雪》 萬之1980・阪本ちづみ
私と妹の物語。私と妻の間にはまもなく子どもが生まれようとしています。しかし、文革の頃に家出して農村に嫁いだ妹・雪児にもまもなく子どもが生まれるという知らせが届きます。母親は妹を心配して、私とともに農村に向かいます。農村は雪に包まれていました。私と母は途方にくれますが、寧という医師にたまたま再開して、雪児のもとに向かうことができます。雪児は難産であり、赤子は死にます。そして、雪児も危篤状態に陥ります。

宮尾正樹・監修『紙の上の月 - 中国の地下文学』収録作品1

『紙の上の月 - 中国の地下文学』は中国でもともと地下文学とした発表された短編小説を収録したもの。

主に北島の作品など。

「廃墟」《在废墟上》北島1978・栗山千香子翻訳
文化大革命の中で、反動分子として弾劾されることになった王琦という教授の物語。娘は中国共産主義青年団に入って父のもとを去りました。教授にはすでに何も残されていません。教授は廃墟に赴き、ロープで首をつって自殺しようと思いますが、父を殺されたという少女と偶然出会い、少女の消えた方に向かって歩き出します。

「父という他人」《归来的陌生人》北島1979・大西陽子翻訳
蘭蘭という娘の視点から叙述された物語。蘭蘭の父親は演劇などに携わっていた文化人らしく、文化大革命の間激しく糾弾されて家を去っていました。その父親が、ぼろぼろになって、久しぶりに帰ってくることになります。しかし、蘭蘭は小さい頃、母親の言葉を正直に受け取って父親は無実だと大人に言ってまわったため、酷い目に遭いました。だから、とくに父親に対して冷淡です。しかし、蘭蘭と父親は公園に散歩に行った時、和解します。

「旋律」《旋律》北島1980阪本ちづみ
尹潔という女性の視点から叙述された物語。尹潔は大志という男性と結婚しますが、毎日のように激しい喧嘩を繰り返しています。しかし、住宅から出ていくわけにいかないので離婚もできません。尹潔は、かつての男友達もまた結婚相手と折り合いをつけることができず、苦しんでいることを知ります。その後、尹潔は仲良く振る舞う老夫婦と会い、それが演技だと思いますが、最終的にその老人との会話で心をうたれて涙を流します。そして、どこかから聞こえてきたバイオリンを心に留めます。


文化大革命に関する小説が多いです。文化大革命が人の心にどのような衝撃を与えたのか、ということを描き出しています。その被害は一過性のものではなく、あとにまで尾を引くものなのだろう、と考えさせられました。