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中国文学映画関連 備忘録

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藤井省三『中国映画を読む本』

『中国映画を読む本』による藤井省三の映画評をまとめたもの。

朝日新聞社、1996。

さまざまな中国の映画に対する批評が掲載されています。非常に参考になります。

ただ、映画作品を政治との関わりから断罪する点などには、疑問を抱きました。たとえば、『さらば、わが愛』に対しては、共産党への批判が回避されているから作品の価値に疑問符が付く、というような評価を下しています。その点だけを問題にすることは、かえって作品を見えなくさせるのではないかと感じます。
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暉峻創三『香港電影世界―アジアン・ウェイヴ』

『香港電影世界―アジアン・ウェイヴ』は暉峻創三による香港映画界の人たちへのインタビューをまとめたもの。

たまたま図書館で見つけたので手に取りましたが非常に面白かったです。
インタビューに応じているのは、ウォン・カーウァイ王家衛、レスリー・チャン張國榮、トニー・レオン梁朝偉、マギー・チャン張曼玉、カレン・モク莫文蔚など。主に、王家衛作品に関連する人たちが多いです。非常に豪華な顔ぶれです。
張國榮が、全く計画通りに映画をとることができない王家衛に対して批判を行っていて面白いです。そのため映画の上映がどんどん先延ばしにされていき、俳優も振り回されるようでは大変だと感じました。その他、さまざまな映画制作の内幕が説明されています。

また、莫文蔚の当時の香港映画界での位置付け(独特な演技派)などもわかります。

岩間一弘・金野純・朱珉・高綱博文編著『上海 都市生活の現代史』

『上海 都市生活の現代史』は、上海という都市を年代ごとに区切りながら分析した研究書。

内容が非常に豊富です。上海を通して、中国の歴史全体を俯瞰するかのような内容にもなっています。とくに印象に残った点だけ記載していきたいです。

Ⅰ 上海モダンと民衆生活―1912~37年
企業家、俸給生活者と主婦、労働者と下層民、外国人などさまざまな立場の人の生活がつづられています。また、中国随一の国際都市として発展したことが上海を面白くしたように思いました。英米租界とフランス租界があって統治が困難だったことが、秘密結社などさまざまな勢力が暗躍する要因となったと初めて知り、興味深かったです。

住宅の変遷に関する記述も面白いと感じました。


Ⅱ 戦時・戦後の都市生活―1937~49年
日本による傀儡政権も三種あったこと。時租界に関して。抗争と謀略の都市としての上海。

上海から香港へのビジネスの移転など。日本人の引き上げに関して。


Ⅲ 中国革命の夢と現実─1949~66年
社会主義がどのように上海を変えたのかという点に関して。
単位と居民委員会。三反、五反運動。
民間企業の接収。大躍進政策、マスコミの役割の変遷など。


与那覇潤『中国化する日本』

『中国化する日本』は、与那覇潤が中国化という概念を用いて、日本の歴史を説明したもの。

「中国化」=グローバル化と、「江戸時代化」=ムラ社会化という言葉を用いて、日本の歴史を見通していく姿勢自体は非常に面白さがあります。ただ、様々な煽りが含まれていて、危険をはらんでいるようにも思いました。

宋代に出現した状態を「中国化」と規定したため、その呼び名を使っていますが、実質中国とその呼び名とはかかわりのない部分が多いです。

岡本隆司『近代中国史』

『近代中国史』は経済の観点から中国の近代史を考察したもの。

非常に示唆に富んだ内容です。

まず自然環境と開発の歴史から中国の歴史を区分します。黄河を中心とした華北が発達して、あとから長江下流域を中心とした江南が発展したという流れ。そして、王朝末期には矛盾が噴出して人口が減少する傾向。政府の手が及ばない莫大な人々。

国と民の乖離、極端な「小さな政府」、自己保存のためだけにあるような政府、納税者がほぼ富裕層という現実、汚職の慣習、階層差別を正当化する科挙制度、特権階級としての士大夫、国と民の間にいる「郷紳」、宗族、同郷同業で結ばれた中間団体、そして、秘密結社。

思想と行為の不一致。重農の虚構、実際のは力を持った商業。

唐宋の「商業革命」と挫折から、明代の伝統経済の成立へ。明代初期の中華イデオロギー、南北格差解消のための現物主義と、その税制。朝貢と海外貿易の禁止。その初期のシステムの破綻、銀納化と地方分業化、通貨の氾濫。そうして、伝統経済の成立へ。

伝統経済を背景とした、康熙帝の時代の銀の流入と景気の回復、清代の人口の急激な拡大、移民の発生、貧困の拡大。

その後の経済の流れもよく説明されています。

密貿易と外国資本に支えられた買弁の発生。茶、生糸が中国からイギリスなどへ、イギリスの植民地インドからアヘン、綿花が中国へ、という三角貿易の形成。貿易の拡大と太平天国による蘇州占領がもたらした上海の勃興。中央政府が力を持たないからこその外国人への関税の委任、不平等条約の締結、リ金(国内商業税)導入による総督の強大化。総督による中間団体の取り込み。

銀の下落による、大豆、羊毛、皮革、綿花、鶏卵輸出の拡大。地方分業から分立への流れ、インド綿糸の流入、原料を輸入し製品を輸出するタイプから、その逆のタイプへの変化。総督などを中心とした個別の工業化の動き、政府が機能しないことによる資本主義化の失敗。日清戦争によってもたらされた賠償金、それを賠償するために動き始めた中央政府、中央と地方の対立、湖北・湖南の張之洞、東三省の張作霖のような地方の分立、中央政府・袁世凱による外国からの借款と軍閥排除、そして貨幣統一の動き。貨幣統一の成功、地方分業の成功、黄金時代、国民政府による経済政策の実現、国内産業の保護の成功。

共産党による二つの目覚ましい成果は、土地改革と、管理通貨。それによって、国内の統一と世界経済からの独立を果たした。ただ、それは大きな問題もはらんでいた。改革開放が始まると、再び沿岸と内陸の格差という問題を引き起こした。



【目次】
I ステージ──環境と経済
 1 自然環境と開発の歴史 
 2 人口動態と聚落形態
II アクター──社会の編成
 1 政府権力 
 2 科挙と官僚制 
 3 民間社会
III パフォーマンス──明清時代と伝統経済
 1 思想と行為 
 2 明朝の成立と中国経済 
 3 転換と形成 
 4 伝統経済の確立 
 5 伝統経済の特徴 
 6 景気の変動 
 7 経済体制と社会構成の定着
IV モダニゼーション――国民経済へ向かって
 1 序曲――一八七〇年代まで
 2 胎動――一八九〇年代まで 
 3 進展――日中戦争まで