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中国文学映画関連 備忘録

宮尾正樹・監修『紙の上の月 - 中国の地下文学』収録作品1

『紙の上の月 - 中国の地下文学』は中国でもともと地下文学とした発表された短編小説を収録したもの。

主に北島の作品など。

「廃墟」《在废墟上》北島1978・栗山千香子翻訳
文化大革命の中で、反動分子として弾劾されることになった王琦という教授の物語。娘は中国共産主義青年団に入って父のもとを去りました。教授にはすでに何も残されていません。教授は廃墟に赴き、ロープで首をつって自殺しようと思いますが、父を殺されたという少女と偶然出会い、少女の消えた方に向かって歩き出します。

「父という他人」《归来的陌生人》北島1979・大西陽子翻訳
蘭蘭という娘の視点から叙述された物語。蘭蘭の父親は演劇などに携わっていた文化人らしく、文化大革命の間激しく糾弾されて家を去っていました。その父親が、ぼろぼろになって、久しぶりに帰ってくることになります。しかし、蘭蘭は小さい頃、母親の言葉を正直に受け取って父親は無実だと大人に言ってまわったため、酷い目に遭いました。だから、とくに父親に対して冷淡です。しかし、蘭蘭と父親は公園に散歩に行った時、和解します。

「旋律」《旋律》北島1980阪本ちづみ
尹潔という女性の視点から叙述された物語。尹潔は大志という男性と結婚しますが、毎日のように激しい喧嘩を繰り返しています。しかし、住宅から出ていくわけにいかないので離婚もできません。尹潔は、かつての男友達もまた結婚相手と折り合いをつけることができず、苦しんでいることを知ります。その後、尹潔は仲良く振る舞う老夫婦と会い、それが演技だと思いますが、最終的にその老人との会話で心をうたれて涙を流します。そして、どこかから聞こえてきたバイオリンを心に留めます。


文化大革命に関する小説が多いです。文化大革命が人の心にどのような衝撃を与えたのか、ということを描き出しています。その被害は一過性のものではなく、あとにまで尾を引くものなのだろう、と考えさせられました。


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