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中国文学映画関連 備忘録

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韓東「部屋と風景」、魏微「鄭さんの女」、韓少功「暗香」、王蒙「玄思小説」(『ミステリー・イン・チャイナ 同時代の中国文学』)

韓東「部屋と風景」、魏微「鄭さんの女」、韓少功「暗香」、王蒙「玄思小説」は『ミステリー・イン・チャイナ 同時代の中国文学』収録作品。

韓東「部屋と風景」
妊娠した莉莉の物語。莉莉は、両親の反対を押し切って労働者の克強と結婚、妊娠します。幼稚園の近くの住むことを強く望んでいましたが、近くの幼稚園は取り壊されて工場の建設が始まります。一部の住民は工場の影になるため強く反対しますが、莉莉たち上の階なので関係ないとはあまり気に留めません。しかし、実際建設が始まると、騒音は鳴りやまず、莉莉たちの部屋も工場の陰に隠れることがわかります。莉莉は妊娠のため克強に当たり散らすようになり、その上、莉莉と部屋を覗き見る作業員との駆け引きも始まります。最終的に生まれた子供は発話に問題を抱えていました。

妊娠と工場建設が並行して綴られています。

様々な意味を読み込むことが可能であり、非常に興味深いです。

魏微「鄭さんの女」
私の家はさまざまな人に部屋を貸していました。福建の鄭という人物が三人の弟を連れてあらわれます。私たちと鄭さんたちはとても仲良くなります。鄭は故郷に妻子を残していました。しかし、鄭は現地の女性と同棲するようになります。しかし、その女性には実は夫がいました。外から来る男性を相手にするタイプの女性だったのです...

韓少功「暗香」
老いた魏という編集者のもとに、突然、竹青が見舞いに現れます。魏はどうしても竹青のことが思い出せません。十何年間かすぎた後、魏は自分の書いた未完の小説の中に竹青という人物がいたことを思い出します。魏の死後、家族が小説を焼き捨てて、竹青が焼死したという手紙が届きます。

虚構と現実の奇妙なかかわりに関して。

王蒙「玄思小説」
王という老人に関してとりとめのない様々な話題に関して。


釜屋修による「あとがき――ミステリー・友好と理解の谷間で」は当代文学に関する分析として非常にまとまっていて参考になります。
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格非《解决》《苏醒》《戒指花》

《解决》《苏醒》《戒指花》は格非の短編小説。格非『格非六短篇』収録。

格非は難解だとよく言われますが、文章自体は明快です。ただ内容に関しては、不可解です。


《解决》
私と王季軍が事故に巻き込まれる物語。

《苏醒》
いろんな人が死ぬ話。実在の文学者が登場します。

《戒指花》
丁小曼という女性記者が、96歳の18歳の少女を強姦して殺害したというニュースのことを調べに行きますが、そのニュースは、根も葉もないゴシップらしいと気付きます。そして、父親が自殺してしまった不憫な少年とあいます...

『「作家」茅盾論』「第6章 『子夜』私論」「第7章 茅盾小説の世界構造――一九三〇年代の都市・農村イメージ」「第8章 「作家精神」の特質――「疎外」と「不能」男性」

『「作家」茅盾論』に関して。

「第6章 『子夜』私論」は、茅盾の代表作と目される『子夜』への分析。著者は、『子夜』は「主題先行」であり、社会構造の絵解きに過ぎない、とする先行研究に反論します。そして、『子夜』には北欧神話の影響を受けた運命観が経済と言う形であらわれて、敵役の姿が曖昧なことによりかえって運命の手先としての怖さがあると評します。

「第7章 茅盾小説の世界構造――一九三〇年代の都市・農村イメージ」は、『子夜』とほぼ同時期に書かれた農村を主題とした短編小説に関する評論。茅盾は、マッチョな貧農の男性に、かすかな希望を見出したのでは、という推論。

「第8章 「作家精神」の特質――「疎外」と「不能」男性」は、武田泰淳の『司馬遷』における「政治的人間」という概念を援用して、茅盾が運命に囚われた「経済的人間」を描いている、とするもの。そして、不能感を大きな要素として取り出します。

これまで、『子夜』しか読んだことがありませんでしたが、茅盾という作家のことを知るきっかけとなりました。非常に興味深い内容です。


『「作家」茅盾論』「 第5章 茅盾と銭杏邨――革命文学論戦再考」

「 第5章 茅盾と銭杏邨――革命文学論戦再考」では茅盾と銭杏邨が論じられています。

銭杏邨は蒋光慈と太陽社を組織した人物。中国共産党に参加、武装蜂起に突き進むことを支持。魯迅、茅盾を批判しました。

著者は、銭杏邨が、茅盾の変化(ロシアのプロレタリア革命への単純な羨望から、中国の現実に対する冷静な認識)を察知して、それを批判したとみなします。そして、銭杏邨の依拠した蔵原惟人などの主張には限界もあったとしつつ、批判されたことによって茅盾の文学論はしっかりと練り上げられた、とします。

蔵原惟人は日本の評論家。日本共産党の立場からプロレタリア文学を後押し。

『「作家」茅盾論』「第4章 『追求』論」

「第4章 『追求』論」では「創造」『追求』が論じられています。

「創造」は、女性を思うがままに教育しようとした男性が結局女性に捨てられる物語。茅盾にとって、「創造」は過去を対象化して絶望的な現在に向き合う契機となったのではと著者は分析。『追求』は革命の失敗後新しい道を探そうとした若者がみな不幸になる物語。

著者は、『追求』に関して「大きな物語」の不在という点において現代にも通じる価値がある、と読み解きます。