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ハ・ジンは1956年生まれの中国系アメリカ人。中国で生まれ育ちました。文化大革命の強烈な影響を受けた世代です。天安門事件が起こった時にはアメリカに留学しており、事件をきっかけにして移住しました。その後、英語で創作を続けており、多くの小説を発表しているそうです。
『すばらしい墜落』はハ・ジンの執筆した短編小説集。立石光子による翻訳。
主に、フラッシングで暮らす在米中国人の人たちの生活が描かれています。どの短編も非常に心を動かされる内容です。
個人的に興味深いと感じたのは、「英文科教授」。アメリカの大学で働くため、研究業績、学生指導、教務に関する資料などを提出した助教の物語。しかし、提出書類のなかのある英単語を間違えていたことに気付いてしまい、長期にわたって苦悩することになります。
「すばらしい墜落」も印象に残りました。アメリカの寺で不当な扱いを受けて自殺しようとした僧侶の物語。しかし、自殺が大々的に報道されたことによって、注目されて、救われることになります。
物語に登場する人たちの状況自体は決して楽観視できるものではありません。中国からアメリカに移住した老夫婦が孫たちに蔑まれる物語や、逆に中国からアメリカに半年間訪れた母親によって家庭が崩壊寸前になる男性の物語など、状況は深刻です。ただ、希望がないわけではありません。辛い立場にある人に対する著者の温かい視点などが特徴的です。
中国で生まれ育ち、中国語を母語としながら英語で小説を執筆している、という点は本当に驚異的です。ハ・ジンの作品をさらに読んでみたい、と思いました。今後、できたら英語の原文にも触れてみたいです。