ジークフリート・レンツは、ドイツの小説家。1926年に生まれて2014年に亡くなりました。代表作は、『国語の時間』(1968)など。
『黙祷の時間』は、レンツが2008年に発表した小説。松永美穂による翻訳。中国語でいえば「师生恋」(教師と生徒の恋愛)を扱っています。
物語は、英語教師シュテラ・ペーターゼンの追悼式の場面から始まります。父親の防波堤作りをよく手伝い、学級委員長もしている男子学生クリスティアンは、追悼式の中で、恋心を抱いていた年上のシュテラに対する思いを再確認していきます。二人は互いに好感を持っていました。しかし、二人の関係は最後まで曖昧でした。クリスティアンはともに暮らすことを望んで大人になろうとしますが、シュテラは教師として振る舞い続けました。最終的にシュテラは海の事故で重傷を負い、入院後亡くなりました。しかし、クリスティアンは思いが強いため、追悼式で表立って発言することは結局できず、沈黙を貫きます。
海に関する風景の描写が細密なので、非常に印象に残りました。「ぼくたちは岩礁に沿って進んだ。砂州が見えてくると、海鳥、特にカモメたちが雲のように一斉に舞い上がり、白い吹雪のような風景を演出した」(p.45)など。もっと他に良い表現があったように思います。
また、女性教師が最近愛読している作家としてフォークナーをあげる点、愛煙家の点なども印象的でした。
余華がエッセイで『国語の時間』に関する思い出を綴っていたので、レンツの作品を改めて手に取りました。『国語の時間』も読まなければ、と思います。以前、『遺失物管理所』を読みましたが今は完全に忘れてしまったので再読したいです。