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中国文学映画関連 備忘録

6/14 『中国現代文学珠玉選』いろいろ

いま『中国現代文学珠玉選』収録の日本語に翻訳された魯迅「孔乙己」、葉聖陶「隔たり」、郁達夫「蔦蘿行」、郭沫若「岐路」などを読んでいる最中。

とくに、葉聖陶「隔たり」(1922)は面白かったです。

主人公は、久しぶりに町に帰り、親戚友人に会う時、同じ会話が何十度も繰り返されることを予期します。そして、どうせ繰り返すしかないならば、「お互いにこれから言おうとする話を蓄音機のレコード盤に収め、お互いに送りあい、繰り返しを省いたら良いのではないか」と考えつきます。
結局、主人公は、町で様々な人に会うのに、最後まで他者との間に隔たりを覚えます。そして、全員が本心で語り合うことのない現状を自覚しながらそれに疲れて何もできません。

様々な読みが可能ですが、素直に読むとすれば疎外の問題が扱われていると言えそうです。描かれているのは、内面の感情と外部に向けた感情発露の乖離、交流の不可能性、現実に対する無力感、内面の疎外など。その背景にあるのは、自己の内面という前提やメタな視点から現実を捉える思考です。中国語の原文でも読んでみたい、と感じました。
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