野沢豊『孫文と中国革命』 中国関連の本(日) 2015年11月23日 0 『孫文と中国革命』は、辛亥革命の研究者・野沢豊が、孫文の人生と思想の変遷を分かりやすくまとめたもの。 1966年出版。当時の野沢豊自身の問題意識などに触れた部分もあります。しかし、基本的には、客観的な立場から、孫文という人間を観察した内容となっています。孫文を英雄として絶対視するのではなく、その思想の揺れ動きなどにも気を配ろうとしていて、非常に参考になります。 「第一章 日本維新は中国革命の第一歩」では、孫文と日本との関わりをまとめています。改良派(黄遵憲、梁啓超、張謇など)と革命派(孫文など)の明治維新に対する考え方の発展と差異を総括。また、孫文と日本の自由民権派(頭山満、宮崎滔天)との交流が土地国有化の考えを生み出したのでは、と推測。1906年8月13日の留日学生による孫文歓迎会での孫文の講演を解説。中華民国の成立時期とその後の孫文の動向とそれに対する日本の動き、孫文と片山潜の比較。孫文の対日批判への移行、日本から離れてソ連を受け入れる姿勢に変化、一方、大アジア主義の演説も行ったことなどもまとめています。 「第二章 人民を皇帝にする」では、孫文が、共和思想を皇帝思想に対置したことを解説。太平天国の伝統、開放的な広州、広州やハワイでの英語による教育などが影響と分析。 「第三章 平民革命により民国政府をたてる」では三民主義などを解説。度重なる武装蜂起の失敗と理論的な進展などをまとめています。また辛亥革命に対する評価も総括。 「第四章 連ソ・容共・農工扶助」では、護法運動の挫折から、国境合作への移り変わり、そして、国民政府建設に向けた動きがまとめられています。 「第五章 革命はまだ成功しない」では、孫文の死後、孫文の思想がどのように利用されたのか、あるいは継承されたのかをまとめています。 PR