《人性恶的证明——余华小说论(1984—1988)》は、樊星による余華論。とくに前期の作品に焦点を当てた内容になっています。
もともと《当代作家评论》1989年02期に掲載。
・余華がデビュー当初発表した《星星》は純粋な童心を描いた心温まる物語。川端康成の影響下にあったと著者自身が認めている通り、その細やかさが特徴的。その後、作風が変化した。たとえば、《现实一种》などは、暴力と鮮血に彩られた作品。なぜ、その変化は起こったのか?
⇒時代の流れと関係がある。同時代の作家たち(王安憶、史鉄生、莫言、賈平凹、張承志)も同じ道をたどった。
⇒感傷を含んだ抒情から、冷淡さへ
・とくに著者が評価するのは《一九六八年》。悪を鋭敏に捉えているから。ドストエフスキーの『罪と罰』を想起させる作品。
・余華には二つの系統の作品がある。写実の手法を用いた自然主義的なものと、現代主義の手法を用いたもの。前者が《西北风呼啸的中午》《现实一种》《河边的错误》、後者が《四月三日事件》《死亡叙述》《世事如烟》《难逃劫数》
・余華のテーマは「宿命」と「狂人」
・余華が描く悲劇の裏側には、「人生とはどうしてこのようなのか」という点に対する考えがある
・ドストエフスキーの人間とはそもそも悪である、という点は、中国の作家にとっても大いに参考になる。とくに、二重人格、カラマーゾフ気質など。とくに中国人の生存危機感において大きな意味を持つ。「これも啓蒙だ」という形で。
・中国の作家は描写のレベルにとどまっている。一方、ドストエフスキーは人間性分析になっている。
一方、ドストエフスキーは思想小説となってる。それはまさに学ぶべき点だ