《鲜血梅花》は余華の短編小説。
武侠小説を換骨奪胎した内容になっています。
十五年前、梅花剣の使い手として名の知られた阮進武は、二人の人物によって殺されます。その息子である阮海闊は、青雲道長と白雨瀟に父親の仇を聞いて仇討ちを果たすように、と母親に言われて梅花剣を渡されます。その後、母親は家に火を放ち、自殺しましした。その後、阮海闊はあてもなく、ひたすら放浪します。
阮海闊は、体中から毒を放つ口紅女(胭脂女)のもとに一泊します。その時、「青雲道長にあったら、劉天がどこにいるか聞いてほしい」と頼まれます。その後、阮海闊は、髪の毛を武器にする黒針の大侠(黑针大侠)と出会い、今度は「青雲道長にあったら、李東はどこにいるか聞いてほしい」と頼まれます。その後、阮海闊は、偶然、白雨瀟と同じ船に乗りますが、白雨瀟と気付くことができませんでした。
その後、阮海闊は、遂に青雲道長と会い、口紅女と黒針の大侠の頼みを果たして劉天と李東の行方を知りますが、父親の仇の名を聞くことに失敗します。そして、また放浪し続けることになります。その後、口紅女と黒針の大侠に劉天と李東の行方を伝えます。阮海闊は、再び白雨瀟と再会して、その時、口紅女と黒針の大侠によって劉天と李東がそれぞれ殺されたことを知ります。
ボルヘスを思わせる奇妙な小説です。
煙と水の描写が印象的。そして、繰り返し使われる遥遠という言葉も印象深いです。
結果として、阮海闊は、思わぬ形で敵討ちを完遂することになります。ただ、それは意図したものでは全くありません。偶然の結果です。
名剣として語られる梅花剣は一度として使われることはありません。他の人たちが阮海闊を識別する際に用いられるだけです。武侠小説を換骨奪胎して、異なる物語にしているといえます。余華の巧みさがよくあらわれています。