溝口雄三、伊東貴之、村田雄二郎『中国という視座』 中国関連の本(日) 2017年11月16日 0 溝口雄三、伊東貴之、村田雄二郎『中国という視座』は、三人の学者が儒教という観点から中国を考察したもの。 「3 中国近代革命と儒教社会の反転(儒教社会の転換;中国革命における国家と社会)」では新末、民国時期、どのように、家父長制を根本に据える儒教、礼治システムが崩壊していったのかということをまとめています。執筆者は村田雄二郎。 儒教社会の転換でふれられているのは、儒教の家父長制、それと対を成すものとしての白蓮教の世界観、『紅楼夢』、『鏡花縁』からみる礼治システムのゆらぎ、太平天国の纏足禁止、女性の同性愛的関係と自殺、魯迅の『祝福』にもとづく考察など。 中国革命における国家と社会でふれられているのは、郷紳のさまざまな変化(「国家退縮」に結び付くような国家に縛られないブローカー的な存在への変貌)、宗族結合の弱まり、共産党の登場、礼治システムを根本から覆した土地改革と婚姻法の制定、「大いなる父」毛沢東の登場、家父長制の形を変えた再現?など。 もともと中国は、行政機構が隅々まで行きとどくという仕組みはなく、「小さな国家」だったという指摘は興味深いです。 大きくクローズアップされるのは梁漱溟です。梁漱溟による郷村建設運動が毛沢東の土地改革路線とはまっこうから対立する、という示唆には、考えさせられました。仮に梁漱溟の提唱したような形で中国の国家建設が進んでいったとすれば(それは諸々の要因に実現しえないものかも知れませんが)どうなっていたのだろうかと考えさせられました。 PR