老舎『黒李と白李』
黒李と白李兄弟の物語。二人は、一人の女性を愛します。黒李は白李のために女性と縁を切りますが、女性はそのことを根に持ち、白李と縁を切ります。そして、白李は黒李を恨み、文句を言います。さらに、分家まで求めるようになります。しかし、黒李は弟を思い、決断できません。
黒李は古い人、白李は新しい人です。たとえば車夫への関わり方が異なります。黒李は車夫の脚を労わるだけですが、白李は車夫を友人とみなして、汽車ができて車夫の仕事が失われることまで見越して心配します。白李は汽車破壊に関与します。その後、黒李は白李の身代わりとして銃殺刑になった。
余華『兄弟』を連想しました。とくに印象に残るのは、兄の自己犠牲。
艾蕪『山峡にて』
本を手離さない青年が、盗賊の一団と一時生活をともにする物語。青年は、盗賊の盗難を手伝います。しかし、盗賊が、重傷を負った仲間を河に投げ捨てる現地を見て、別れようとします。しかし、盗賊の頭の娘は青年をはなそうとしません。その後、役人と兵士の一行が現れて娘が危地に陥った時、青年は機転を利かせて農民を装い、危機を逃れます。その翌日の朝、起きると盗賊はすでにおらず、青年はただ一人残されていました。
ラストで描かれる、盗賊に取り残された青年の寂寞など、非常に味わいがあります。
風景描写も非常に美しいです。原文でも読んでみたいと感じました。
丁玲『霞村にいた時』
著者自身らしき女性が休息のため二週間ほど霞村に滞在した時、出会った力強い女性・貞貞の物語。貞貞は、日本軍に捕まり、長く日本軍のもとで生活しました。村人たちはその女性が日本人将校の奥様になり、うまく立ち回った、とみなして見下しています。それでも、村には貞貞のことを支えようとする青年がいました。しかし、貞貞は最終的に延安にいき、強く生きていこうと決断します。
抑圧された女性を扱った作品。
戦争下で抑圧を受けた女性がその抑圧とどう向き合ったのか、という点を扱った作品。ただ、語り手はあくまで傍観者であり、女性の内心に踏み込むことはありません。その点は誠実です。
ラストでは、共産党に参加することによって強く生きていく、という選択が暗示されます。