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中国文学映画関連 備忘録

『満鉄の調査と研究 : その「神話」と実像』「フレーム・アップと「抵抗」—満鉄調査部事件」

「フレーム・アップと「抵抗」—満鉄調査部事件」は松村高夫が満鉄調査部事件に関してまとめたもの。『満鉄の調査と研究 : その「神話」と実像』所収。第八章。

さまざまな資料に基づいて満鉄調査部事件の実態を明らかにしようとするもの。示唆に富んでいます。

満鉄調査部事件とは、関東軍憲兵隊が、満鉄調査部の中で反国家的な陰謀が行われているとして多数の調査部員を検挙、起訴した事件のこと。起訴された人の中には執行猶予付きの懲役刑となった人もいます。長らく真相は不明とされてきましたが、最近様々な研究が発表されるようになりました。

中国で発見された新しい証言に基づいて、潜在的な動きがあったと判断する研究(『満鉄調査部事件の真相―新発見史料が語る「知の集団」の見果てぬ夢』など、)もいます。しかし、松村高夫は、そういった主張に反対します。そして、証言は強要されたものであり、事件それ自体をフレーム・アップとみなします。戦後の証言に関しても、何らかの形で軍部に抵抗を試みていたと信じたい、という心情によって影響を受けている可能性もある、とします。

証言の扱い方に関して考えさせられます。
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