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中国文学映画関連 備忘録

賈樟柯『四川のうた』《二十四城記》

『四川のうた』《二十四城記》は、賈樟柯監督が2008年に制作した中国・日本合作の映画です。四川に存在した、ある工場の解体を描いています。

「420工場」と呼ばれてきた四川郊外の国営工場が閉鎖されます。そして、その跡地に、二十四城と名付けられた無数の高層マンションが建設されます。『四川のうた』では、「420工場」と関わりを持つ様々な人たちに対するインタビューの形式で、人々の歴史が語られていきます。

「420工場」は、もともと空軍飛行機のエンジンなどを製造する工場でした。しかし、環境の変化を受けて家電製品の製造に転換、そして、遂に閉鎖、移転されることになります。工場の中に福利厚生の設備がすべて整っていて、住民は一貫して「420工場」の中だけで生きてきました。そのため工場の閉鎖は多くの人たちの生活に甚大な影響をもたらしました。

事実と虚構が組み合わされています。8人の関係者に対するインタビューが収録されていますが、その内4人は中国でも著名な役者であり、そのストーリーはフィクションです。賈樟柯は、事実と虚構を組み合わせることによって、中国の歴史の中での変化という主題をより分かりやすく伝えることができる、と判断して、この構成にしたようですが、観客を考えさせる仕組みになっています。

エピソードと対応した音楽も印象的です。山口百恵の「赤いシリーズ」が中国でもヒットしたため、山口百恵は中国でも非常に有名でした。『四川のうた』の中では、そのエピソードとともに、『赤い疑惑』の主題歌が流れます。その他、斉秦の《外面的世界》も、非常に心を打ちます。

とくに印象に残るのは、趙涛が演じる蘇娜のエピソード。蘇娜は「420工場」の労働者の娘として育ちました。当初は父母に対して良い印象を持たず、彼氏のもとを渡り歩いていました。しかし、母親が工場で男か女かも分からない格好で働いている様子を目にして、心をいれかえます。そして家に帰り、バイヤーとして成功します。今は、さらに大金を稼いで、父母のために二十四城”の部屋を買うことを目指していると語ります。さらに、労働者の娘だからこそ、それは実現できる、と言い放ちます。
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