賈樟柯《三峡好人》『長江哀歌』 映画(中文) 2016年01月17日 0 《三峡好人》『長江哀歌』は賈樟柯監督が2006年に制作した映画作品。 三峡ダムの建設により水没を迎えようとしている街と、自分の愛と決着をつけるためその街を訪れた二人の人間を描いています。風景に対する観察が非常に細かいです。とくに、建造物を破壊していく男たちの姿が印象に残ります。 物語の舞台は、三峡ダムの建設により水没の危機に瀕する奉節県。物語の主役は山西省から人を探すため奉節に来た二人の男女。男性・韓三明は山西省の炭鉱で働いていました。しかし、十六年間会っていない前妻に会うため汾陽から訪れた奉節を訪れます。当時、韓三明は前妻を金で買いましたが、こどもが生まれた後妻は逃げるようにして故郷に帰りました。韓三明は前妻と娘を探すため、一時的に奉節に留まり、取り壊し作業の現場で働くことにします。女性・沈紅は太原から訪れた寡黙な看護師です。二年間にわたって、ほとんど連絡が取れない夫に会うため奉節に来ました。彼女と夫の夫婦関係はすでに崩れていました。夫は沈紅を避けているのかなかなか現れません。しかし、沈紅は最終的に夫と会い、別れを告げます。一方、韓三明は前妻を見つけると彼女を取り戻すため、前妻の兄の借金を肩代わりすることを受け入れます。 長い歴史を経てきた街が二年間で破壊されて川底に沈む現場を映しだしています。その事実が背景にあるからこそ、映画全体に迫力があります。ダム建設によってもたらされたあまりにも大きな変化に関して、その土地の人たちが受けとめることは容易ではないように思われます。しかし、工事は人々の思いを置き去りにして進んでいきます。 映画は、アナウンスやニュースを挟み込むことにより映画の構造を分かりやすく見ている人に伝えようとしています。そのため映画の中で流れている時間はゆっくりしていますが、みやすいです。 賈樟柯監督は、自身が奉節のことに詳しくないので、外から訪れた者の視点から映画を撮影したと語っています。賈樟柯監督の映画は、基本的には、常に山西省の人たちが軸となっています。 沈紅がずっと水を飲み続けている点が印象に残ります。 PR