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中国文学映画関連 備忘録

7/17余华《第七天》

余华《第七天》を読み返していました。余华は中国現代の小説家。《第七天》は、ある男が魂となって放浪しながら父を探すうちに、様々な社会問題の被害者となった死者たちと出会う、という物語。

作中では、強制立退き、事故被害の隠蔽、幼児の大量廃棄、貧しい若者の地下生活、違法臓器売買、食品汚染、墓地価格の高騰、デモ、高官の不正、苛烈な拷問、賄賂の横行、ニセモノの横行などが描かれています。(强制拆迁、瞒报死亡人数、死婴丢弃、“鼠族”生活、地下卖肾,假冒食品…)

小説の主人公は杨飞。杨飞は、火葬を催促する電話がかかってきて自分が死んだことに気付きます。しかし、どのように死んだのかを思い出すことはできません。彼は火葬されるため葬儀場に行き、順番を待ちますが、墓地がなく火葬を諦めます。そして、魂となって放浪します。

そのうちに杨飞はレストランで火災に遭い、圧死したことを思い出します。その時、彼は、高官の愛人となった前妻・李青が犯罪捜査から逃れるため自殺したことを伝える記事に驚いて、逃げ遅れたのです。

杨飞は、同じく死んだ李青と一時だけ再開した後、自分の育ての親・杨金彪を探し始めます。杨金彪は、偶然拾った杨飞のため結婚も諦めました。親子の情はとても深かったのです。しかし、杨金彪は晩年重い病を患い、杨飞に迷惑をかけないように、と失踪しました。恐らく見つかるはずです。杨飞は放浪するうちに、ニュースを騒がした様々な人々と出会います。

現実世界では不条理が横行して、格差が解消される見込みはありません。その現実を照らし出すものとして、平等な死後の世界が描き出されています。

中国の特殊な状況を描いている、と評されますが、貧困の問題などは日本など他の地域にも通底する部分があるのではないか、とすこし考えました。
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