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中国文学映画関連 備忘録

岩佐昌暲・編『中国現代文学と九州 異国・青春・戦争』2

『中国現代文学と九州 異国・青春・戦争』は、さまざまな中国文学研究者が、近現代の中国文学作家と九州との関わりに関してまとめたもの。非常に興味深いです。

「第4章 夏衍と北九州」
夏衍は中国の著名な劇作家。左翼作家同盟設立において中心的な役割を果たして、多くの脚本を発表。後には中日友好協会会長もつとめました。

夏衍は明治専門学校(九州工業大学)に在籍。九州と関わりを持ちました。明治専門学校は、もともと安川敬一郎が設立。安川敬一郎の孫文など中国との不快つながりのため中国人学生を受け入れていたそう。

九州の炭鉱業界の利益が、日本における自由民権運動や中国の民権派活動の資金源というはなしなど興味深かったです。

「第5章 冗海を見ていた墓-魯迅と鎌田誠一」
魯迅とある日本人の友情に関して。魯迅は、1934年5月に結核で亡くなった日本人・鎌田誠一のためにわざわざ墓碑を書きました。鎌田誠一は、上海内山書店の店員。彼は、1932年上海事変の時、日中間の戦闘が激化する中、魯迅を守るため、租界や内山書店への避難と潜伏を援助しました。また、二人は芸術関連の話題でも意気投合していたようです。

「第6章 魯迅と長崎」
魯迅の長崎に対する思いに関して。魯迅は療養のため、長崎に来たいと願いながら一度も来ることができませんでした。なぜ長崎なのかという点に関する研究。著者は、長崎におけるキリスト教徒に対する弾圧が魯迅にとって興味深かったのでは、と指摘。

一方、その妻、許広平は戦後原水爆の大会に参加するため長崎に来ているそうです。

「第7章 「満州国」詩人矢原礼三郎と『九州芸術』」
名前の知られていない詩人・矢原礼三郎に関して。矢原礼三郎は九州の文壇と満州の文壇にかかわりを持ち、詩を執筆。とくに目を引くのは、日本に対して批判的な立場の満州国詩人との交友がある点。また、日本を批判しているとみられるがある点。

「第8章 内なる自己を照らす「故郷」-坂口れい子の文学における台湾と九州」
戦後、台湾の原住民をテーマにした小説を書いて芥川賞候補にもなった坂口れい子に関して。戦前台湾で執筆した小説と、戦後日本で執筆した小説をつなげて考える必要があるとの指摘。

「第9章 魯迅と郭沫若-その九州大学との関係」
 魯迅と郭沫若を九州大学に招こうという計画があった、というはなし。


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