むかし読んだ時とは、それぞれ印象が異なるので面白かったです。
凌叔華「刺綉の枕」
掌編。刺繍に励むお嬢さんとそのお手伝いと、その娘の物語。苦労して丹念につくりあげたはずの刺繍が、二年後、切れ端となってかえってきます。そして、御嬢さんは二年前のことを思い出しながら呆然とします。
廃名「桃畑」
非常に不思議な小説。桃畑を営む酒浸りの父と病弱な娘の物語。幻想と現実が入り混じっています。物語全体が誰の視点から綴られているのかもよく分かりません。さまざまな欠片を寄せ集めて、小説をつくりあげたかのようです。
原文で読んでみたいと感じました。実験的な作風といえるのかも知れません。
馮至「伯牛、疾あり」
馮至が、孔子と伯牛のエピソードを短編小説に仕立て上げたもの。孔子の非常に優れた弟子・伯牛は、美人と結婚した後、病(ハンセン病?)を患います。そして、妻と別れて、人々から口々に罵られながら死のうとしています。孔子は伯牛の手をにぎり、なんという運命だと嘆きますが、どうすることもできません・・・
歴史小説。
施蟄存「梅雨の夕べ」
ある既婚の男性が、大雨の中で初恋の人に似た女性と出会い、自分の傘にいれて、途中まで送り届ける、という物語。男性の思考の流れにそって物語が構成されていて、非常に面白いです。けっこう、くどくどとしていますが、その点が笑いを誘います。