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中国文学映画関連 備忘録

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贾樟柯《任逍遥》『青の稲妻』

《任逍遥》『青の稲妻』は贾樟柯監督による2002年の作品。

二人の少年・小季と斌斌は毎日あてもなくバイクに乗って放浪している。あるいは娯楽室で時間をつぶしている。小季はダンサー巧巧(赵涛)に惹かれる。しかし、巧巧には彼氏がいた。彼氏は街のゴロツキであり、金貸しをしていた。小季は彼氏の存在を無視して巧巧に接近するが、その結果制裁を受ける。斌斌は母親の意向に従って軍隊を目指すが、健康診断の結果軍隊に入ることができない。一方、斌斌の彼女は北京に行って大学で勉学に励み、未来に踏み出そうとしている。彼らのいる山西大同は北京から遠かったが、高速道路が通ることにより状況は変化しようとしていた。斌斌は金を借りて彼女に電話を送り、さらに風俗に行く。その後、小季と斌斌は銀行強盗をしようとするが失敗する。

地方都市の若者を描いた映画。

中国の地方都市に生きる若者たちの閉塞感が描き出されています。

贾樟柯らしい長回しによって映画全体が構成されています。とくにバイクで坂を上ろうとして何度も何度も何度も失敗する場面は、映画全体を象徴しているような印象を受けました。

未来に希望を見出すことのできない人間と未来に向かって踏み出していく人間の対比が非常に鮮明です。たとえば、斌斌と、斌斌の彼女の関係など。斌斌の彼女が北京の大学に受かれば、その二人の関係に続きがないだろうということは明らかです。斌斌は、面白みのない地方都市に取り残されることになります。

また、ニュース、アニメ、放送などが画面の中に巧みに挿入されています。


《任逍遥》(2002■贾樟柯■赵涛、赵维威、吴琼、王宏伟■『青の稲妻』)
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王家卫《一代宗师3D》『グランド・マスター』

《一代宗师3D》『グランド・マスター』は王家卫監督による2013年の映画。

中華武士会会長の宫宝森(王庆祥)は北方から広東省の佛山に来て、南方の武術人と切磋琢磨を望む。叶问(梁朝伟)は推挙されてその勝負に望む。宫宝森の娘・宫若梅(章子怡)は叶问を破る。日本の侵略の後,宫宝森の子弟だった马三が裏切り宫宝森を殺す。宫若梅は復讐を誓って結婚を諦める。そして、宫若梅は马三と戦い,最終的に勝利するが、同時に重大な内傷を負う。叶问は1950年で香港で弟子をとるようになり、宫若梅と再び巡り合う。

武侠映画。

物語は叶问(梁朝伟)と宫若梅(章子怡)の関係を軸にして進んでいきます。

王家衛らしい映像美が随所に発揮されています。タバコをアップでうつしだす場面などが印象に残りました。その他、戦闘シーンも非常に美しく描写されています。戦闘のシーンがある意味、ダンスのようです。

基本的には史実に基づいているそうです。随所に史実に関する説明が挿入されます。また、その当時のものと思われる映像も挿入されて雰囲気を醸し出しています。

独特の言い回しなども、相変わらずです。ただ、個人的には王家衛の昔の作品の方がより王家衛らしさがあり面白く感じました。

《一代宗师》(2012■王家卫■梁朝伟、章子怡、赵本山、张震、小沈阳■『グランド・マスター』)

徐峥《人再囧途之泰囧》

《人再囧途之泰囧》は徐峥監督による2012年の映画。

成功したビジネスマン・徐朗(徐峥)は油の体積を増やす「油霸」を発明、さらに開発しようとしますが、ビジネスパートナー高博(黄渤)は「油霸」をフランス企業に売ろうとします。そして二人は対立、それぞれタイに向かった最大の株主・周扬から承諾を得ようとします。徐朗は家庭を顧みないため妻から離婚を要求されますが無視してタイへ。高博も、フランスでの妻とのハネムーンを切り上げてタイへ。徐朗は途中で、母親思いの青年・王宝(王宝强)と出会い、パスポートを紛失したので王宝を利用してタイを移動しようとします。その後、タイを舞台として、徐朗、王宝コンビと高博の追跡劇が始まります。最終的に、三人は周扬の委任状に辿りつきますが、徐朗は権利を放棄、さらに家族との関係をないがしろにしたことを改悛します。帰国後、徐朗は、王宝を家に招き、范冰冰とともに写真をとらせてあげます。
コメディ映画。

中国でメガヒットを記録したそうです。

非常に面白いです。ただ《人在囧途》のほうがよりテーマが明確だったようにも思います。そして、王宝强の役柄も《人在囧途》の時の方が王宝强自身にあっていたのではないかと若干感じました。

タイを舞台にしたことを最大限に利用して、タイのさまざまな風土をバックに追跡劇を展開していきます。その点は非常に演出が巧みだというふうに感じました。


《人再囧途之泰囧》(2012■徐峥■徐峥、王宝强、黄渤、陶虹、范冰冰■)

关锦鹏《人在纽约》(《三个女人的故事》)

《人在纽约》(《三个女人的故事》)は关锦鹏監督による1989年の映画。

《三個女人的故事》は香港、台湾、大陸からアメリカニューヨークに渡ってきた三人の女性の物語です。趙紅は大陸からアメリカに移り住み,新生活を開始します。しかし、アメリカに母親を迎えようとしながら夫の理解を得られず、悩みます。黃維屏は台湾からアメリカに移り住んですでに十数年になります。すでにアメリカ生活に馴染み、外国人のボーイフレンドもいます。そして、舞台芸術の方面で活躍しようとしています。李鳳嬌は香港からアメリカに移り住み、家族とともにアメリカでレストランを開きます。李鳳嬌は家族の心配を無視して、男性を相手にせず、女性だけを愛します。

女性の立場から、社会のなかで生きる女性のありかたを描き出す、というスタイルをとっています。結婚してこそ一人前、というような見方に対して女性はどのように振る舞うべきか、という点など非常に考えさせられる作品です。

女性だけで集まって盛り上がる場面など、非常に印象に残ります。

また年老いた家族とともに暮らす中国の文化と、家族とともに暮らさないアメリカの文化の差異などが摩擦の原因となっている点も注目に値するように思いました。

遠くから、ニューヨーク全体をうつす最後の場面は感動的です。


《人在纽约》(1989■关锦鹏■张艾嘉、张曼玉、斯琴高娃■『Full Moon in New York』)

姜文《让子弹飞》『さらば復讐の狼たちよ』

《让子弹飞》『さらば復讐の狼たちよ』は姜文監督による2010年の映画。

民国八年(1919年),県長の地位を金で買った马邦德(葛优)は妻(刘嘉玲)、师爷(冯小刚)とともに任地へ向かう。その途中で馬賊の「张麻子」(原名张牧之,姜文)の待ち伏せに遭い、夫婦だけが助かる。马邦德は命を守るため汤师爷と名乗り、「张麻子」を言いくるめようとする。张麻子は马邦德の言葉に従い、県長のふりをして鹅城に行き、財産を得ようとする。しかし、鹅城は物流によって巨額の富を蓄えた土豪の黄四郎(周润发)によって支配されていた。张麻子と黄四郎は相容れず、争うことになる。最終的に张麻子は民衆に銀を配り、それを黄四郎に回収させることによって民衆の黄四郎への怒りを煽る。さらに、民衆に大量の銃を配り、黄四郎の影武者を殺して民衆をたきつけることによって、黄四郎を倒した。

四川作家・马识途の長編小说《夜谭十记》の中の《盗官记》の一節を映画化したそうです。

张麻子(姜文)、黄四郎(周润发)、马邦德(葛优)の三つ巴の戦いが描かれています。张麻子(姜文)は学問を知りませんが戦闘に長けています。公平を理念として掲げます。一方、黄四郎(周润发)は圧倒的な権力を背景として、残虐な手段を用います。一方、马邦德(葛优)は達者な口と強い者に従う戦略で勝ち残ろうとします。

中国では2010年最大のヒットになり、国産映画の記録を塗り替えたそうです。

黄四郎(周润发)の影武者が物語の中で思わぬ活躍を見せます。その点が非常に面白いです。

女性も一応登場しますが基本的には男たちの戦いの物語になっています。ただ、その男たちも決して英雄ではなく、欠点がある者として、シニカルかつコミカルに描き出されています。その点が面白いです。

《让子弹飞》(2010■姜文■姜文、周润发、葛优、冯小刚、刘嘉玲、周韵■『さらば復讐の狼たちよ』)