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中国文学映画関連 備忘録

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陈凯歌《黄土地》『黄色い大地』

《黄土地》は陈凯歌が制作した1984年の映画作品。

中国映画界のニューウェーブ登場を、中国のみならず世界にまで印象付けた傑作として評価されています。すでに数多くの評論があります。

共産党八路军の文芸工作員である顾青は民謡を採集する仕事についています。顾青は、陕西の黄土高原の村に訪れます。そして,父親、弟憨憨とともに慎ましく暮らす農家の娘・翠巧と出会います。顾青は延安は開明的だといいます。そのことが翠巧の憧れを呼び覚まします。しかし、翠巧は村で望まぬ婚姻を強いられることになります。顾青が村を離れる時、翠巧は連れて行ってほしい、と楽しみます。しかし顾青は共産党の規則があるから、といって聞き容れません。その後、翠巧は望まぬ婚姻を逃れて延安を目指します。そして、夜、河を渡ろうとします。しかし、彼女の歌は途中で途切れます。雨が降らないため人々が雨乞いしている時、顾青はまた村に戻ってきます。しかし、翠巧は見当たりません。そして憨憨は顾青に話しかけるため人の流れに逆らって進みますが、顾青にたどりつけそうもありません。。。

カメラは、遠くから風景の中に溶け込んでいる人たちをうつしだします。一面荒野がひろがる画面になんといってもまず目を奪われます。

一方、村の人たちはほとんど表情らしい表情を浮かべることはありません。僅かな顔の動きにも気を取られることになります。そして、沈黙があるからこそ、かえって民謡が印象的に鳴り響きます。

顾青と村の人たちとの関係はきわめてぎこちないものです。意思は通じているようではありますが、通じていないようでもあります。国民党や共産党がさまざまな理念を掲げて争う中、農村には全くそういった理念と相いれないような世界が広がっていたのではないか、ということを想像させられて愕然とします。

また、共産党との関係性から映画を読み解くことは可能であり、その点、非常に意味深長です。

《黄土地》(1984■陈凯歌■薛白、王学圻、谭托、刘强■『黄色い大地』)

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贾樟柯《世界》

《世界》は贾樟柯監督の2004年の作品。

赵小桃(赵涛)は山西人。北京に上京して、北京の世界公園でダンサーをしています。彼の現在の彼氏は公園の警備員・成太生(成泰燊)です。赵小桃は結婚を望みますが、成太生は曖昧な態度をとり続けています。成太生の同郷人、三赖(王宏伟)は“二姑娘”というあだなの若者を北京に連れてきて建築現場でともに働きます。

成太生は友人から頼まれて、廖姐(黄依群)に付き添い、山西省に借金の処理に行きます。赵小桃は公園でロシア人の女性アンナと知り合いますが,アンナは程なくして仕事を替えます。そして別れ際に赵小桃はアンナから歌を教わります。成太生は赵小桃に汚いホテルでセックスを迫りますが、赵小桃は拒絶します。成太生は廖姐に接近します。一方、赵小桃は同僚とともにカラオケに誘われて、その席で男性から関係を迫られますが拒絶します。そして、そのカラオケのトイレで偶然アンナと再開して涙します。

“二姑娘”は夜中に残業して事故に遭います。そして、さまざまな人間に借金している、と書き残して死にます。彼の兄(韩三明)は北京にして救済金をもらって帰ります。赵小桃は遂に成太生との性行為に同意します。しかし赵小桃は、廖姐が出国する間際、成太生に送った愛のメッセージを発見します。そして、二人の間には距離が生まれます。最終的に二人は部屋で、一酸化中毒になります。

赵小桃という女性に関する映画。
長回しが多く、さまざまな風景や音が画面の中にはいりこんでいます。とくにテレビの音や近くの物音などが台詞と並行して聞こえることにより、臨場感が生まれています。また、顔のアップはほとんどありません。だから、かえって登場人物の表情や心情を推測させられることになります。

ロシア人とのやりとりの中で、分かり合うとはどういうことかと考えさせられました。

登場人物と同じくらい、風景が重視されています。不自然にも思えるアニメーションが挿入されることにより、いっそう北京の風景が浮き立ちます。

脇役ですが、韩三明の存在が印象に残ります。

動物とダンスに関して、気になりました。他の贾樟柯映画でも動物とダンスが特徴的に描かれていたので、総合的に分析したら面白そうです。

《世界》(2004■贾樟柯■赵涛、成泰燊、黄依群■『世界』)

陈可辛《如果爱》『ウィンター・ソング』

《如果爱》『ウィンター・ソング』は陈可辛が制作した2005年の香港映画。

現在と過去が交錯する恋愛映画。ミュージカルが取り入れられています。

2005年上海,中国のスター女優、孙纳(周迅)と香港のスター男優、林见东(金城武)はミュージカル映画で共演することになります。その映画の監督を勤めるのは、孙纳と深い仲にあり、今では大監督として知られる聂文(张学友)でした。その映画のストーリーは、まるで現在の三人を反映したかのような内容となります。

1995年北京映画を学ぶ林见东は偶然、孙纳と出会います。林见东は監督になりたいと望み、孙纳は大女優になりたいと望みました。二人は助け合い、愛し合うようになります。しかし、孙纳は映画界における成功を勝ち取るため、他の監督たちに靡き、林见东のもとを去ります。 その後、林见东も男優として成功して、2005年、二人は終に共演を果たしました。林见东は孙纳に再び惹かれます。しかし、孙纳は、もうすでにかつての孙纳ではありません。そのため林见东の心は揺れ動きます。林见东は孙纳とともに、かつて二人がともに過ごした北京の家に戻ります。そして、愛し合います。孙纳は林见东に対する思いを再確認します。聂文はそれを理解して、去ります。一方、林见东もまた自分の思いに決着をつけることができたためか去ります。そして孙纳は一人取り残されます。
 
池珍熙が人々の大切な記憶を取り戻させるものとして、興味深い役柄で登場します。

映画それ自体に対する自己言及を含んでいます。映画に関する映画ともいえるかも知れません。


张艺谋《满城尽带黄金甲》

《满城尽带黄金甲》『王妃の紋章』は、張芸謀が制作した2006年の映画。

曹禺の代表作『雷雨』を翻案した物語。中国王朝の歴史の中に、家族の物語を当てはめていますが史実とは関係がないそうです。

大王(周润发)は一介の軍人でしたが、大王に上り詰めました。彼はかつて隣国の公主・元配夫人(陈瑾)との間と結婚して二人の間に太子・元祥(刘烨)が生まれます。しかし、大王は元配夫人を捨てて、後妻・王后(巩俐)を娶ります。二人の間に二王子・元杰(周杰伦)と三王子・秦俊杰が生まれます。一方、元配夫人は名を隠して蒋太医(倪大宏)に嫁ぎ、蒋婵(李曼)を生みます。
継母にあたる王后と太子は密かに愛し合います。大王は、その乱倫に気付き、王后の薬の中に慢性の毒を入れさせます。王后は報復を試みて,二王子元杰を説得して、重陽節の際に大王を殺そうとします。太子は、さらに実は実の妹にあたる蒋太医の娘・蒋婵ともその事実を知らず、愛し合います。重陽節の日、大王は蒋太医一家を殺そうとします。しかし、元配夫人と蒋蝉は王后に救われて宮殿に招かれます。しかし、そこで王后が、太子と蒋婵の関係を告げると蒋婵は発狂して殺されます。元杰は王后のため宮廷に攻め込みます。しかし、反乱は失敗して元傑は捕えられます。一方、三王子元成が太子を刺殺して、権力を奪取しようとします。しかし大王は、元成を殺します。その後、大王は元傑を後継者と定めます。その上で、王后に毎日毒を飲ませることを罰として与えますが、元傑は自刎します。


非常にどろどろとした物語です。

巩俐の演技がとくに印象に残ります。

歴史劇にしたことによって、CGを使用した壮大な戦闘シーン、骨肉の殺し合いなどの表現が組み込まれました。そして、多くの歴史劇ファンを観客として巻き込むことも可能になったようです。ただ、陳腐な戦闘シーンのために時間を割けば、人間関係を描く時間が減ります。


王家卫《旺角卡門》『いますぐ抱きしめたい』

《旺角卡門》『いますぐ抱きしめたい』は王家衛監督のデビュー作。

ヤクザの義兄弟である华仔(刘德华)と乌蝇(张学友)の絆と、华仔といとこ阿娥(张曼玉)の恋愛が物語の軸になっています。

华仔と乌蝇は旺角のヤクザです。阿华は、すでに殺伐とした世界に疲れています。しかし、乌蝇は世間から注目されるような大きなことをしたいと考えて、いつも华仔に迷惑をかけています。ある日、阿华のいとこ阿娥が病気の検診のため大屿山から旺角に来て阿华の家に泊まります。二人は惹かれあいますが、阿娥は裏社会で生きる阿华を警戒したのか、ほどなくして帰ります。乌蝇の弟、阿西は結婚式をします。しかし資金がないので、乌蝇はTonyから8000元を借ります。しかし、結婚式がみすぼらしいので、阿西の結婚相手の父は激怒して乌蝇と激しく罵り合います。さらに、利息をめぐって乌蝇とTonyの間にも争いが起きます。阿华は乌蝇のために、Tonyと張り合い、二人の関係は悪化します。その後、华仔は阿娥のもとにいき、幸せな日々をすごします。一方、阿华に戒められた乌蝇は鱼丸を売る仕事を始めます。しかし、Tonyから嘲笑されて乌蝇は激怒して、Tonyの車を密かに破壊します。その後、見つかってTonyの部下たちに重傷を負わされます。华仔はTonyとその部下たちのもとにいき、銃で脅迫して乌蝇を救い出します。しかし、程なくして報復に遭い、二人は激しい暴行を受けます。华仔は阿娥のもとで看病を受け、幸せな日々をすごします。乌蝇は自分の能力を発揮するため,阿公の言いつけを聞いて阿基を射殺する仕事につくことにします。阿华は阿西から電話を受けて乌蝇をとめようとします。そして、乌蝇を見つけた後、彼に早まって愚かなことをしてはいけないと諭します。しかし、乌蝇はすでに決心を固めていました。そして、乌蝇は、法廷に連行されていく阿基と周囲の警察官を撃ち、射殺された。阿华も阿基を撃ち、警察官に頭部を撃たれます。

筋書き自体は非常に明快です。暴力と愛といったノワール映画に必要なものがそろっています。
 
義弟のためにすべてを投げ出す刘德华が非常に格好良いです。そして、ほとんど化粧をしていないように思われる张曼玉は可憐です。
 
ただ、セリフが広東語であり、字幕も読み取れないことがありました。

《阿飞正传》(1990■王家卫■张国荣、刘德华、张曼玉、刘嘉玲、张学友、梁朝伟■『欲望の翼』)