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中国文学映画関連 備忘録

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余华《黄昏里的男孩》

《黄昏里的男孩》は余华の短編小説。

孫福という果物を売っている老人が、果物を盗んだ少年を懲らしめる物語。孫福は少年に対して執拗に罰を与えます。まず盗んだものを吐き出すことを要求して、右手の中指を折ります。さらに蹴り飛ばして、縛り付けて「私はコソ泥です」と人が通るたびに言うように仕向けます。孫福は少年が同じ過ちを繰り替えないためにしているのだ、少年のためだ、と言います。少年は縄を解かれた後、黄昏の中で歩いて去ります。その後、孫福の過去が描かれます。息子は沼に落ちて亡くなり、妻は理髪師とともに去りました。

奇妙な小説。1995/12/22

少年の物語というより、孫福という人物の物語といったほうが適切です。

描かれるのは暴力、罪、罰の関係に関して。

非常に考えさせられます。
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余华《我没有自己的名字》

《我没有自己的名字》は余华の小説。

『狂人日記』を髣髴とさせるような、ある悲劇に関して。

周囲の人間から軽く扱われている「私」の物語。私は周囲の人たちからばかにされています。そして、ある時、犬を妻だと言われます。私は拒否しますが、その犬と仲良くなります。しかし、周囲の人たちによって犬は食われてしまいます。その際、犬を呼び出したのは私でした。

一貫して私の側から物語が綴られていきます。

無力な人物が主人公となっている余華の小説としてはよくあるパターンの小説。


王家卫《春光乍泄》

《春光乍泄》は王家卫監督による1997年の映画。

 黎耀辉(梁朝伟)と何宝荣(张国荣)は同性愛者です。二人は香港からアルゼンチンに来ます。あるとき、何宝荣はイグアスの滝が描かれたライトを買い、美しいと思って見に行こうとします。しかし、その途中で道に迷い、喧嘩が始まり、二人は別れます。二人は、帰国するためのお金もなく、エノスアイレスで生活していくことになります。黎耀辉はドアマンをして稼ぎ、何宝荣は白人男性と付き合うことで生きていきます。何宝荣が、黎耀辉のために持ってきた腕時計が災いのもとになり、何宝荣は負傷します。そして、何宝荣は黎耀辉のもとで看病を受けて二人は「やり直す」こととなります。しかし、怪我が治ると何宝荣はまた奔放に振舞い始めます。黎耀辉はレストラン、食肉用の豚の工場などの仕事を転々とします。レストランでは、耳の良い青年、张宛(张震)と出会います。黎耀辉は最終的にイグアスの滝を見た後、一人で国に帰ります。张宛は、黎耀辉の思いを録音した録音機を持って、南米最南端の岬にある灯台に向かいますが、そこに録音されていたのはすすり泣きだけでした。黎耀辉は台湾にいき、张宛の実家である屋台を訪れます。
 
同性愛者である二人の愛を扱った映画。

黎耀辉は堅実、一方、何宝荣は奔放です。何宝荣は他人に依存することにより生き続けているような側面があります。

黎耀辉はタバコと酒をほとんど手放すことがありません。とくに寒い外ではずっと酒を飲み続けています。

白黒の場面とカラーの場面があります。登場人物の状況に応じて変化しているのかもしれません。また、香港がブエノスアイレスの逆側に位置していることから、香港の様子が上下さかさまにうつされる場面などもあります。そういった遊びのような面が非常に面白いです。

黎耀辉ののったMRTが高速で進んでいく様子を、乗っている人間の視点からうつしだした最後の場面は、非常に爽快です。

さまざまな事情があったためか物語としてはいびつともいえるような形式になっています。王家衛監督の作品ではありがちなことではありますが。。。


 《春光乍泄》(1997■王家卫■梁朝伟、张国荣、张宛■『ブエノスアイレス』)


王家卫《花样年华》

物語の舞台は、1962年の香港。新聞社で編集をしている周慕云とその妻が、上海人の集まるアパートに引越してきます。同じ日、陈太太苏丽珍とその夫も引越してきます。お互いの配偶者は海外出張といって日本に行き、なかなか帰ってきません。後になって二人は自分の配偶者がお互いの配偶者と付き合っていると察知します。そして、お互いに惹かれあいます。周慕云は連載小説を書き始めて、自分の書斎を持ち、その書斎で苏丽珍と小説のストーリーに関して語り合います。最終的に、苏丽珍の夫が帰ってくることに伴って、周慕云は苏丽珍の前から去ります。最終的に、周慕云はアンコールワットで穴に自分の思いを語りかけて土で埋めます。
 
さまざまな謎が残されます。

チャイナドレスをみにまとう张曼玉と、スーツ姿の梁朝伟。二人が画面の中でさまざまな表情を見せます。とくに、座り続けて疲れたのかもぞもぞと動く、唇がかすかに動く、などといった細かい点に注目する点は面白いです。

また序盤では、狭い通路で、横から顔がうつされるシーンが多数ありますが、その点も面白かったです。
 
王家衛が毎回用いるモチーフが《花样年华》でも改めて登場します。
  
  周慕云が去る直前にかけた電話は、おそらく苏丽珍には届かなかったのではないか、という推理をまとめている人がいますが同感です。
 
   
《花样年华》(2000■王家卫■张曼玉、梁朝伟■『花様年華』)

余华《蹦蹦跳跳的游戏》

《蹦蹦跳跳的游戏》は余华の短編小説。

病院の前で雑貨屋を営む老人・林德顺は、こどもを連れて病院に来る父母を遠くから見つめています。一週間ほど後に来た時、老人は父母と会話しますが、その時こどもはすでに亡くなっていました。

蹦蹦跳跳的游戏とは、母と子が繰り広げている足を踏む遊びのこと。

非常に短いです。

早くに亡くなるはずの老人が残り、子どもが亡くなる、という展開になっています。