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中国文学映画関連 備忘録

ガルシア=マルケス『族長の秋』

ガルシア=マルケス(1928年~2014年)はコロンビアの小説家。『族長の秋』は、ガルシア=マルケスが『百年の孤独』発表のあとで執筆した小説。

『ガルシア=マルケス作品集』収録。鼓直翻訳。

幾度も大統領の死後の場面に舞い戻りながら、その度に過去に遡行して、大統領の様々な側面を描き出していく、という展開になっています。人称がよく変化します。日本語に翻訳する上では様々な困難があっただろうと思いました。

『族長の秋』は、大統領がハゲタカに食い荒らされたらしい、と判明する場面から始まります。その後、百年にもわたって国を支配してきた大統領のことが描かれていきます。たとえば、大統領の母親パトリシオ・アラゴネスに対する愛、大統領の愛なき愛、マヌエラ・サンチェスへの唯一ともいうべき愛、アメリカをはじめとした各国によって海を含む全てを奪われる国家の様相、最も信頼する側近アギラル将軍との信頼関係と最終的な確執、度重なる内部の権力闘争、民衆に対する虐殺など。

とくに浮かび上がるのは大統領の孤独です。
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