竹内好「前事不忘、後事之師」 中国関連の本(日) 2017年12月11日 0 「前事不忘、後事之師」は竹内好が1972年『朝日ジャーナル』で発表した文章。 日中両政府が日中共同声明に調印したあと竹内好がそれに応答したもの。 声明に盛り込まれた反省という言葉、戦争賠償の放棄という部分から中国側が筋を通したのに対して日本側は押されているのではないか、という分析。 また、主語を省くことができる日本語の曖昧さ、それが招く日本の責任回避の態度にも言及。 そして、日本側と中国側の違いに関して触れています。過去を反省してその上で前を見据えていこうという中国に対して、過去を切り捨てて明日のために話し合うという日本はまったく異なり、それはあとになって問題を招くかもしれないとも記しています。 「小異を捨てて大同につく」日本と、「小異を残して大同を求める」中国では異なるとも指摘しています。 月刊誌『中国』の休刊理由にもふれています。 PR
竹内好「講和の原点」 中国関連の本(日) 2017年12月11日 0 「講和の原点」は竹内好が1972年に『朝日ジャーナル』で発表した文章。『竹内好セレクションII アジアへの/からのまなざし』収録。 日中国交正常化に向けた議論の基礎を整理したもの。降伏を受諾したポツダム宣言が、日中国交正常の原点であると竹内好は主張しました。 アメリカと中国が接近したことによって、なし崩し的に国交が回復することに対しては危機感を持っているようです。そして、原理原則というものを大切にするべきだといっています。
竹内好「中国のレジスタンス」 中国関連の本(日) 2017年12月09日 0 「中国のレジスタンス」は竹内好が1949年5月号『知性』に発表した文章。 林語堂の小説『Moment In Peking』が、日本語に翻訳された時、意訳されたことを通して、日本が中国を見誤っていると指摘しています。 簡単にまとめれば、日本語版では、日本人の悪行が隠されています。日本軍が中国東北などで「密輸と麻薬」を売り、それが戦争を支える資金にもなっていた、という事実も分からないようになっているそうです。結果として日本人は中国の「抗日」を見誤った、とします。 竹内好は林語堂より茅盾を評価すると記していて興味深いです。 また、両極にある人として毛沢東と、林語堂を並べて、両極でありながら抗日という一点において二人は結び付いたということを指摘します。
松井博光『薄明の文学―中国のリアリズム作家・茅盾』2 中国関連の本(日) 2017年12月04日 0 『薄明の文学―中国のリアリズム作家・茅盾』は、松井博光による茅盾研究。 茅盾の足取りを明らかにするものとなっていて非常に興味深いです。 魯迅、瞿秋白、茅盾の関係に関しても触れていますが、そういった点も考えさせられます。 そして、第二次世界大戦勃発後、各地を転々とした茅盾のありかたも興味深く思いました。 第3章 1930年代の茅盾―左連・『子夜』・『自由談』 1 左連加盟/2 上海事変と商務印書館/3 瞿秋白と茅盾/4 《『子夜』はどのようにして書いたか》/5 『子夜』をめぐって/6 《春蚕》と《林商店》/7 『自由談』と雑文 第4章 流浪する茅盾―抗戦期と内戦期 1 上海、香港、ウルムチ/2 香港、桂林、重慶/3 『腐蝕』『霜葉は二月の花より紅い』『鍛錬』 邦訳された茅盾の主要著作/茅盾略年譜/あとがき
竹内好「日本人の中国観」 中国関連の本(日) 2017年12月03日 0 「日本人の中国観」は竹内好が1949年9月号『展望』に「伝統と革命-日本人の中国観」と題して発表した文章。『竹内好セレクションII アジアへの/からのまなざし』収録。 1948年に訪日した張群の言葉に応答する形で執筆されています。張群の提起した日本においてまだ「思想革命と心理建設」が必要だという認識は正しく、その点を大部分の日本人は読み違えているというふうに竹内好は主張します。 そして、中国人がまだ日本の民主化に対して不信を持っている点にも理解を示します。また近藤鶴代などが対支文化事業部のようなものを復活するのも一案だと思う、といったことを例に挙げて戦前戦後、日本人の中国への侮蔑意識が消えていないと指摘します。 そして近代化において、日本は表面的なものに終わって失敗し、中国は根本的に成し遂げたという仮説を示します。