忍者ブログ

中国文学映画関連 備忘録

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


岩間一弘・金野純・朱珉・高綱博文編著『上海 都市生活の現代史』

『上海 都市生活の現代史』は、上海という都市を年代ごとに区切りながら分析した研究書。

内容が非常に豊富です。上海を通して、中国の歴史全体を俯瞰するかのような内容にもなっています。とくに印象に残った点だけ記載していきたいです。

Ⅰ 上海モダンと民衆生活―1912~37年
企業家、俸給生活者と主婦、労働者と下層民、外国人などさまざまな立場の人の生活がつづられています。また、中国随一の国際都市として発展したことが上海を面白くしたように思いました。英米租界とフランス租界があって統治が困難だったことが、秘密結社などさまざまな勢力が暗躍する要因となったと初めて知り、興味深かったです。

住宅の変遷に関する記述も面白いと感じました。


Ⅱ 戦時・戦後の都市生活―1937~49年
日本による傀儡政権も三種あったこと。時租界に関して。抗争と謀略の都市としての上海。

上海から香港へのビジネスの移転など。日本人の引き上げに関して。


Ⅲ 中国革命の夢と現実─1949~66年
社会主義がどのように上海を変えたのかという点に関して。
単位と居民委員会。三反、五反運動。
民間企業の接収。大躍進政策、マスコミの役割の変遷など。

PR

見たことのある中華圏映画

・見たことのある中華圏映画

《马路天使》(1935■袁牧之■赵丹、周璇)
《红高粱》(1987■张艺谋■姜文、巩俐、滕汝骏■『紅いコーリャン』)
《客途秋恨》(1990■许鞍华■陆小芬、张曼玉)
《活着》(1993■张艺谋■葛优、巩俐■『活きる』)
《霸王别姬》(1993■陈凯歌■张国荣、巩俐、张丰毅■『さらば、わが愛』)
《大话西游之月光宝盒》(1994■刘镇伟■周星驰、朱茵、莫文蔚、蓝洁瑛、吴孟达、罗家英■『チャイニーズ・オデッセイ Part1 月光の恋』)
《饮食男女》(1994■李安■郎雄、吴倩莲、杨贵媚、王渝文■『恋人たちの食卓』)
《好男好女》(1995■侯孝贤■伊能静、林强、高捷)
《小武》(1997■贾樟柯■王宏伟■『一瞬の夢』)
《鬼子来了》(2000■姜文■姜文、姜鸿波、香川照之■『鬼が来た!』)
《绿茶》(2002■张元■姜文、赵薇■『緑茶』)
《色,戒》(2007■李安■梁朝伟、汤唯、陈冲、王力宏■『ラスト、コーション』)
《赤壁》(2008、2009■吴宇森■金城武、梁朝伟、林志玲、张丰毅、张震、赵薇、胡军■『レッドクリフ』)
《海角七號》(2008■魏德圣■范逸臣、田中千绘、中孝介■『海角七号 君想う、国境の南』)
《梅兰芳》(2008■陈凯歌■黎明、章子怡、陈红、孙红雷■『花の生涯~梅蘭芳~』)
《让子弹飞》(2010■姜文■姜文、周润发、葛优、刘嘉玲、陈坤■『さらば復讐の狼たちよ』)
《山楂树之恋》(2010■张艺谋■周冬雨、窦骁■『サンザシの樹の下で』)
《那些年,我们一起追的女孩》(2011■九把刀■柯震东、陈妍希■『あの頃、君を追いかけた』)
《中国合伙人》(2013■陈可辛■黄晓明、邓超、佟大为■『アメリカン・ドリーム・イン・チャイナ』)
《天注定》(2013■贾樟柯■姜武、王宝强、赵涛、罗蓝山■『罪の手ざわり』)
《西游记之大圣归来》(2015■动画电影)

賈樟柯『四川のうた』《二十四城記》

『四川のうた』《二十四城記》は、賈樟柯監督が2008年に制作した中国・日本合作の映画です。四川に存在した、ある工場の解体を描いています。

「420工場」と呼ばれてきた四川郊外の国営工場が閉鎖されます。そして、その跡地に、二十四城と名付けられた無数の高層マンションが建設されます。『四川のうた』では、「420工場」と関わりを持つ様々な人たちに対するインタビューの形式で、人々の歴史が語られていきます。

「420工場」は、もともと空軍飛行機のエンジンなどを製造する工場でした。しかし、環境の変化を受けて家電製品の製造に転換、そして、遂に閉鎖、移転されることになります。工場の中に福利厚生の設備がすべて整っていて、住民は一貫して「420工場」の中だけで生きてきました。そのため工場の閉鎖は多くの人たちの生活に甚大な影響をもたらしました。

事実と虚構が組み合わされています。8人の関係者に対するインタビューが収録されていますが、その内4人は中国でも著名な役者であり、そのストーリーはフィクションです。賈樟柯は、事実と虚構を組み合わせることによって、中国の歴史の中での変化という主題をより分かりやすく伝えることができる、と判断して、この構成にしたようですが、観客を考えさせる仕組みになっています。

エピソードと対応した音楽も印象的です。山口百恵の「赤いシリーズ」が中国でもヒットしたため、山口百恵は中国でも非常に有名でした。『四川のうた』の中では、そのエピソードとともに、『赤い疑惑』の主題歌が流れます。その他、斉秦の《外面的世界》も、非常に心を打ちます。

とくに印象に残るのは、趙涛が演じる蘇娜のエピソード。蘇娜は「420工場」の労働者の娘として育ちました。当初は父母に対して良い印象を持たず、彼氏のもとを渡り歩いていました。しかし、母親が工場で男か女かも分からない格好で働いている様子を目にして、心をいれかえます。そして家に帰り、バイヤーとして成功します。今は、さらに大金を稼いで、父母のために二十四城”の部屋を買うことを目指していると語ります。さらに、労働者の娘だからこそ、それは実現できる、と言い放ちます。

与那覇潤『中国化する日本』

『中国化する日本』は、与那覇潤が中国化という概念を用いて、日本の歴史を説明したもの。

「中国化」=グローバル化と、「江戸時代化」=ムラ社会化という言葉を用いて、日本の歴史を見通していく姿勢自体は非常に面白さがあります。ただ、様々な煽りが含まれていて、危険をはらんでいるようにも思いました。

宋代に出現した状態を「中国化」と規定したため、その呼び名を使っていますが、実質中国とその呼び名とはかかわりのない部分が多いです。

京都精華大学出版会『リベラリズムの苦悶 イマニュエル・ウォーラーステインが語る混沌の未来』

『リベラリズムの苦悶 イマニュエル・ウォーラーステインが語る混沌の未来』は、京都精華大学開学25周年記念事業として行われたイマニュエル・ウォーラーステインの1993.12.7の講演とそれに付随する質疑応答、座談会などをまとめたもの。

鶴見俊介によるアメリカ哲学史の紹介。「リベラリズムの苦悶 進歩への希望を何につなぐか」と題して行われたウォーラーステインの講演と、質疑応答がそれに続きます。司会は武藤一羊、コメンテーターはいいだもも。そのあとに、「『混沌』の時代の社会科学」と題する座談会が続きます。座談会はさまざまな領域の研究者たち。本田健吉、阪本靖朗、若森章孝、塩沢由典、柴谷篤弘、司会は小野暸。

鶴見俊介の部分では、経歴とUnthinkという言葉に関する考察がつづられていて興味深いです。

ウォーラーステインの講演は主に、1989を境にして、それまで覇権を握ってきたリベラリズムの権威が失墜したという内容です。そして、システムと反システムの闘争は続くはずであり、その中で、私たちは反システムの側に立って相対的に平等主義的で完全な民主的な史的システムを望み、暗闇の中で模索するべき、と呼びかけます。

ただリベラリズムという用語の使い方には注意が必要かと思われます。ウォーラーステインの講演の中では、リベラリズムは左右双方の妥協を導き出す考え方であり、基本的にはエリート主義、先進国の一部の人たちの利益のみを結局として代表する考え方、とされています。

ウォーラーステインはマルクス主義を批判的に継承した、とされているそうです。実際、具体的な現実とのかかわりから思考を深めるという点はマルクスと共通しています。
座談会の内容も四分五裂の内容となっていて、興味深いです。とくにウォーラーステインに対する批判に関して考えさせられました。結局あいまいで答えを出していない、という指摘、あるいはマルクスと同じく学問というより、イデオロギーに陥っているという指摘など。