忍者ブログ

中国文学映画関連 備忘録

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


馮小剛《夜宴》『女帝 [エンペラー]』

《夜宴》『女帝 [エンペラー]』は馮小剛が2006年に制作した映画。

歴史劇。物語の筋書き自体は、シェークスピアの『ハムレット』を翻案しているそうです。

物語の舞台は、中国の五代十国時代のある王国。皇帝の弟・厲(葛優)は、皇后・婉(章子怡)を奪うために皇帝を殺します。厲と婉は親密になっていきます。しかし、婉は、実は皇太子・無鸞(呉彦祖)に心惹かれています。一方、皇太子・無鸞は、重臣である殷太常(馬精武)の娘・青女(周迅)と相思相愛の仲になります。皇太子・無鸞は、厲によって殺されかけますが、殷太常(馬精武)の息子、殷隼(黄暁明)に救われて身を隠します。

その後、厲は盛大な宴会を開き、正式に皇帝になろうとします。物語のクライマックスとなります。婉は厲を殺すことを決意して毒を盛った杯を渡します。しかし、青女が仮面をつけて人たちを引き攣れて舞を献上したため、厲は、酒を毒と知らず青女に賜り、青女は死にます。その後、無鸞は厲を倒そうしますが、厲は婉に毒を盛られたことにショックを受けて毒を煽り、自害します。殷隼は婉を殺そうとしますが、無鸞が婉を庇って死にます。そして、婉が殷隼を殺します。そして最終的に、殷隼は女帝となります。しかし、何者かがはなった越女剣によって命を奪われます。

ワイヤーアクションの多様、血で血を洗う戦い、豪華な宮殿など、中国の歴史劇の定番の設定が活かされています。しかし、仮面の多様、ダンスを取り入れた戦闘シーンなどは独特です。そして、物語筋書き自体も非常に人工的です。中国の歴史を再現した劇とはいえません。

誰も幸せになりません。後味が良い映画とは思えません。

とくに印象に残るのは、さまざまな場面で登場する仮面です。

愛とは何か、本心とは何か、欲望とは何か、といった問題も考えさせられます。物語の中で描かれているのは、ほぼすべてがすれ違いです。
PR

賈樟柯《三峡好人》『長江哀歌』

《三峡好人》『長江哀歌』は賈樟柯監督が2006年に制作した映画作品。

三峡ダムの建設により水没を迎えようとしている街と、自分の愛と決着をつけるためその街を訪れた二人の人間を描いています。風景に対する観察が非常に細かいです。とくに、建造物を破壊していく男たちの姿が印象に残ります。

物語の舞台は、三峡ダムの建設により水没の危機に瀕する奉節県。物語の主役は山西省から人を探すため奉節に来た二人の男女。男性・韓三明は山西省の炭鉱で働いていました。しかし、十六年間会っていない前妻に会うため汾陽から訪れた奉節を訪れます。当時、韓三明は前妻を金で買いましたが、こどもが生まれた後妻は逃げるようにして故郷に帰りました。韓三明は前妻と娘を探すため、一時的に奉節に留まり、取り壊し作業の現場で働くことにします。女性・沈紅は太原から訪れた寡黙な看護師です。二年間にわたって、ほとんど連絡が取れない夫に会うため奉節に来ました。彼女と夫の夫婦関係はすでに崩れていました。夫は沈紅を避けているのかなかなか現れません。しかし、沈紅は最終的に夫と会い、別れを告げます。一方、韓三明は前妻を見つけると彼女を取り戻すため、前妻の兄の借金を肩代わりすることを受け入れます。

長い歴史を経てきた街が二年間で破壊されて川底に沈む現場を映しだしています。その事実が背景にあるからこそ、映画全体に迫力があります。ダム建設によってもたらされたあまりにも大きな変化に関して、その土地の人たちが受けとめることは容易ではないように思われます。しかし、工事は人々の思いを置き去りにして進んでいきます。

映画は、アナウンスやニュースを挟み込むことにより映画の構造を分かりやすく見ている人に伝えようとしています。そのため映画の中で流れている時間はゆっくりしていますが、みやすいです。

賈樟柯監督は、自身が奉節のことに詳しくないので、外から訪れた者の視点から映画を撮影したと語っています。賈樟柯監督の映画は、基本的には、常に山西省の人たちが軸となっています。

沈紅がずっと水を飲み続けている点が印象に残ります。


《人在囧途》

《人在囧途》は、葉偉民監督による2010年の中国映画。

春節(旧正月)故郷に帰ろうとして道中度重なる苦難に見舞われる男を描いています。
春節(旧正月)間近となり、玩具会社の社長、李成功は家族の住む長沙に帰り年を越そうとします。愛人・曼妮は李成功に対して、妻との離婚を迫り、家に赴くと告げます。その後、李成功は航空で、偶然、借金を取り立てるため長沙に行向かう牛乳絞りの牛耿と出会います。その後、飛行機は雪のため引き返します。そして、李成功と牛耿は他の手段を用いて長沙に向かうことになります。その過程で様々な出来事に遭遇して李成功は非常に狼狽して、社長としての形象を完全に失いますが、牛耿は全く困難を気にすることもなく楽観的です。飛行機、汽車、大型バス、フェリー、トラック、トラック、そして徒歩。しかし、二人は長沙に辿りつくことができず、荒野で大晦日を迎えます。深夜、二人は酒を飲みかわしながら、みちのりを振り返り、彼らと出会ってきた人や事を思い出して、人生に思いを馳せることになります。最終的に、二人は見死ぬ人から友人となりました。その後、疲れ果てて帰郷した李成功は彼より早く長沙に来ていた愛人・曼妮と出会い、彼の妻と会っていたと聞かされて不安に満たされます。しかし、家に着くと全ては変わらず、家族は幸せそうに過ごしていました。李成功は妻に謝罪します。

非常に面白かったです。

登場する人たちは基本的に良い人です(不倫している李成功以外・・・)。安心してみることができます。


王家衛《重庆森林》『恋する惑星』

《重庆森林》『恋する惑星』は、王家衛監督が1994年に制作した映画。二つの恋愛に関する物語が描かれています。一つは、警官223号(金城武)と金髪の女性(林青霞)のすれ違いの物語。もう一つは、警官663号(梁朝偉)と阿菲(王菲)の物語。

警察223何志武は失恋した後、走って汗を流すことによって涙を流すことに替えています。何志武は自分の誕生日である5月1日をタイムリミットと定めます。そして、一ヶ月の時間を設けて、仮に誕生日までに彼女が戻ってこなかったら、彼のこれまでの恋愛は期限切れになるのだと決めます。そして、その間パイナップルを食べ続けます。期限切れを迎える前の日、彼はバーで指名手配犯の金髪の女性と出会います。そして、ホテルに行きますが、女性は休息を必要としていました。何志武は一人テレビを見ながら食べ物をとり続けて、朝を迎える前にひっそりと立ち去ります。その朝、何志武のもとに誰かから誕生時おめでとうというメッセージが届きました。

警官663号は、フライトアテンダントの彼女と付き合っていて、彼女のことを待ち続けています。ある時、警官663号は飲食店で、大音量で音楽を流しながら働く阿菲と出会います。阿菲は警官663号に惹かれるようになります。程なくして警官663号はフライトアテンダントの彼女からふられます。阿菲は夢の中で警官663号の部屋に忍び込み、掃除をして、さらに内装を変えます。一方、警官663号は、一人でいる時には寂しさを感じて部屋の物が泣いていると感じます。夢が夢ではなくなり、阿菲と警官663号は警官663号の家で鉢合わせします。最終的に警官663号は、阿菲に「加州」(カリフォルニア)というバーで会おうと誘いますが、すれ違いになります。阿菲は本当のカリフォルニアを見たい、と考えて、一年後のエアチケットを残して去ってしまいます。一年後、阿菲はフライトアテンダントの姿で、もともと勤めていたお店にもどってきます。警官663号は、そのお店を買い取り、彼女のことを待っていました。

出会いとすれ違いに関する映画。

多くの会話は、広東語によってなされています。金城武は、北京語、日本語、広東語、英語などを使います。言語の面から見ると非常に面白いです。

物語の中に登場する人たちはみな独特であり、普通に考えたら奇妙と思えるような一面を持っています。しかし、逆にふつうの人というものはありえないのではないか、とも考えさせられます。