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中国文学映画関連 備忘録

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岩間一弘・金野純・朱珉・高綱博文編著『上海 都市生活の現代史』その2

上海のことを知ることができる良書。

Ⅳ 文化大革命の混乱―1966~78年
上海における文化大革命の影響など。そもそも震源地は上海ともいえると知り、興味深かったです。上海「一月革命」、革命委員会、上山下郷運動、

Ⅴ 「改革」と「開放」の胎動―1978~92年
路地裏住民の日常生活、害職業とグルメ文化の勃興、多様化するファッション、大衆娯楽の復活、分各世代の青年の憂鬱、第二次天安門事件の衝撃、「改革」「開放」のなかの上海と日本

Ⅵ 高度成長期の都市生活―1992~2010年
とくに内容が充実しています。現代の上海をさまざまな側面から検討する内容となっています。
株式投資ブーム、不動産開発と周正毅事件、流通業の発展とショッピングの多様化、消費生活の変化と新たな消費者の誕生、変わりゆく結婚事情と結婚生活、国有企業改革と高齢者の社会保障、均衡農村の都市化、医療問題と農民工、教育熱と学歴競争、浦東新区の開発、地下鉄網と郊外の発達、上海万博、上海と日本


Ⅶ ライフストーリーからみる上海と日本
伊藤俊彦と王志祥、朱金和と朱ミン。当時を生きた人の記述を通して、上海の歴史に関して感じることができる内容となっています。

現在の物事を考える上では歴史を踏まえることがなんといっても大切なのではないか、ということを感じました。

ただ若干誤字脱字が多いのが残念です。

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王家卫《旺角卡門》『いますぐ抱きしめたい』

《旺角卡門》『いますぐ抱きしめたい』は王家衛監督のデビュー作。

ヤクザの義兄弟である华仔(刘德华)と乌蝇(张学友)の絆と、华仔といとこ阿娥(张曼玉)の恋愛が物語の軸になっています。

华仔と乌蝇は旺角のヤクザです。阿华は、すでに殺伐とした世界に疲れています。しかし、乌蝇は世間から注目されるような大きなことをしたいと考えて、いつも华仔に迷惑をかけています。ある日、阿华のいとこ阿娥が病気の検診のため大屿山から旺角に来て阿华の家に泊まります。二人は惹かれあいますが、阿娥は裏社会で生きる阿华を警戒したのか、ほどなくして帰ります。乌蝇の弟、阿西は結婚式をします。しかし資金がないので、乌蝇はTonyから8000元を借ります。しかし、結婚式がみすぼらしいので、阿西の結婚相手の父は激怒して乌蝇と激しく罵り合います。さらに、利息をめぐって乌蝇とTonyの間にも争いが起きます。阿华は乌蝇のために、Tonyと張り合い、二人の関係は悪化します。その後、华仔は阿娥のもとにいき、幸せな日々をすごします。一方、阿华に戒められた乌蝇は鱼丸を売る仕事を始めます。しかし、Tonyから嘲笑されて乌蝇は激怒して、Tonyの車を密かに破壊します。その後、見つかってTonyの部下たちに重傷を負わされます。华仔はTonyとその部下たちのもとにいき、銃で脅迫して乌蝇を救い出します。しかし、程なくして報復に遭い、二人は激しい暴行を受けます。华仔は阿娥のもとで看病を受け、幸せな日々をすごします。乌蝇は自分の能力を発揮するため,阿公の言いつけを聞いて阿基を射殺する仕事につくことにします。阿华は阿西から電話を受けて乌蝇をとめようとします。そして、乌蝇を見つけた後、彼に早まって愚かなことをしてはいけないと諭します。しかし、乌蝇はすでに決心を固めていました。そして、乌蝇は、法廷に連行されていく阿基と周囲の警察官を撃ち、射殺された。阿华も阿基を撃ち、警察官に頭部を撃たれます。

筋書き自体は非常に明快です。暴力と愛といったノワール映画に必要なものがそろっています。
 
義弟のためにすべてを投げ出す刘德华が非常に格好良いです。そして、ほとんど化粧をしていないように思われる张曼玉は可憐です。
 
ただ、セリフが広東語であり、字幕も読み取れないことがありました。

《阿飞正传》(1990■王家卫■张国荣、刘德华、张曼玉、刘嘉玲、张学友、梁朝伟■『欲望の翼』)


藤井省三『中国映画を読む本』

『中国映画を読む本』による藤井省三の映画評をまとめたもの。

朝日新聞社、1996。

さまざまな中国の映画に対する批評が掲載されています。非常に参考になります。

ただ、映画作品を政治との関わりから断罪する点などには、疑問を抱きました。たとえば、『さらば、わが愛』に対しては、共産党への批判が回避されているから作品の価値に疑問符が付く、というような評価を下しています。その点だけを問題にすることは、かえって作品を見えなくさせるのではないかと感じます。

暉峻創三『香港電影世界―アジアン・ウェイヴ』

『香港電影世界―アジアン・ウェイヴ』は暉峻創三による香港映画界の人たちへのインタビューをまとめたもの。

たまたま図書館で見つけたので手に取りましたが非常に面白かったです。
インタビューに応じているのは、ウォン・カーウァイ王家衛、レスリー・チャン張國榮、トニー・レオン梁朝偉、マギー・チャン張曼玉、カレン・モク莫文蔚など。主に、王家衛作品に関連する人たちが多いです。非常に豪華な顔ぶれです。
張國榮が、全く計画通りに映画をとることができない王家衛に対して批判を行っていて面白いです。そのため映画の上映がどんどん先延ばしにされていき、俳優も振り回されるようでは大変だと感じました。その他、さまざまな映画制作の内幕が説明されています。

また、莫文蔚の当時の香港映画界での位置付け(独特な演技派)などもわかります。

楊文軍、黄斌《何以笙箫默》

《何以笙箫默》は、杨文军、黄斌監督による2015年の映画。女性作家・顧漫のネット小説を基にしています。

物語の舞台は上海。カメラマン赵默笙(杨幂)は七年ぶりにアメリカから帰国します。そして、大学時代につきあっていた何以琛(黄晓明)と再開します。何以琛は、著名な若手弁護士になっていました。二人はお互いに惹かれあいます。しかし、学生時代、赵默笙が突如として何以琛を置き去りにしてアメリカに去った経緯があるため、二人の間には壁があります。さらに、何以琛の血縁関係のない妹・以玫(杨颖)、赵默笙のアメリカ時代の夫・应晖(佟大为)などが二人の恋路を遮るかのように次々と出現します。しかし、二人の愛情は崩れることはなく、結婚に至ります。

物語の筋書き自体は明快です。

ただ、原作を一本の映画にまとめたたためダイジェストのようになっています。原作を読んでいない人にとっては理解し難い部分が多いように思われます。ただ、スピーディに物語が進むので、その点見ていて気が楽です。