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中国文学映画関連 備忘録

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周星驰《少林足球》『少林サッカー』

明锋(吴孟达)は「黄金の右脚」とよばれていました。しかし、强雄(谢贤)に騙されて重要な試合でわざとゴールを外したため名誉を失い、暴徒に右足を叩かれてサッカーができなくなります。数十年後、老いた明锋は强雄(谢贤)のもとで雑用をしていましたが、偶然、少林寺拳法を広めようとする青年・阿星(周星驰饰)と出会い、サッカーに誘います。阿星は、铁头功(黄一飞)、旋风地堂腿(莫美林)、金钟罩铁布衫(田启文)、鬼影擒拿手(陈国坤)、轻功水上飘(林子聪)とともに「少林隊」を結成して試合に出場、順調に勝ち進みます。一方、阿星は、太極拳を用いて饅頭をつくる少女・阿梅(赵薇)を勇気付けます。阿梅は阿星に密かに恋していますが、阿星は取り合いません。その後、「少林隊」は決勝戦で强雄のチーム「魔鬼隊」と激突します。「魔鬼隊」が圧倒的な強さを見せますが、阿梅があらわれて試合に参加すると形成は逆転、「少林隊」は勝利します。その後、阿梅と阿星は結ばれて拳法をブームにした立役者として『タイムス』の表紙を飾りました。

少林寺とサッカーを組み合わせたコミカルな映画。

スポーツを題材にした作品としては、王道をいく明快なストーリーです。もともと落ちぶれていた人たちが自分の特技を生かして、強者に立ち向かうことになります。ただ、普通のスポーツ映画ではなく、周星驰らしいギャグが山のように詰め込まれています。

『少林サッカー』でも、ヒロイン赵薇に醜さを強調するようなメイクをさせています。その点は、インパクトがあります。

日本でも一般公開されたため、日本では周星馳の作品の中で最も有名かも知れません。

强雄(谢贤)が非常に貫禄があります。


《少林足球》(2001■周星驰■ 周星驰、赵薇、吴孟达■『少林サッカー』)
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林ひふみ『中国・台湾・香港 映画の中の日本』

『中国・台湾・香港 映画の中の日本』は、林ひふみによる映画評論。

明治大学リバティブックス。

扱われている映画は中国・香港・台湾映画のなかでもきわめて代表的なもの。その中で日本がどのように描かれているかが論じられていきます。

とくに興味深いと感じたのは、台湾関連。台湾本省人である呉念真が、台湾映画の中で、大きな役割を果たした、ということを初めて知りました。呉念真の映画をこれからしっかり見ていきたいです。

また、『海角七号—君想う、国境の南』において描かれているのは、日本と台湾の和解ではなく、台湾人内部の群族同士の和解であり、台湾人は台湾人だといっているのだ、という読み解きは見事です。

香港映画に関して。『客途秋恨』のなかの母親の日本語が不自然であるという指摘は理解できます。ただ、母親のイメージが定まらない、という点に関しては、それ自体が興味深い現象なのではないか、と感じました。ちょっとあらすじがおぼろげにしか思い出せないのでもう一度みたいです。

まだ見たことのない映画が多いので、見てみたいです。



プロローグ 中国語映画に響く日本語の歌  
第一章 中国戦争映画の「日本鬼子」
『紅いコーリャン』(一九八七年、張芸謀監督)●
『さらば、わが愛 覇王別姫』(一九九三年、陳凱歌監督)●
『鬼が来た!』(二〇〇〇年、姜文監督)●
第二章 台湾映画の日本家屋という亡霊 
『冬冬の夏休み』(一九八四年、侯孝賢監督)  
『童年往事—時の流れ』(一九八五年、侯孝賢監督)  
『牯嶺街(クーリンチエ)少年殺人事件』(一九九一年、楊徳昌監督)  
『多桑 父さん』(一九九四年、呉念真監督)  
第三章 香港映画の「荒唐無稽」な日本
『風の輝く朝に』(一九八四年、梁普智監督)
『客途秋恨』(一九九〇年、許鞍華監督)●
『恋する惑星』(一九九四年、王家衛監督)●
第四章 中国映画と高倉健
『単騎、千里を走る。』(二〇〇四年、張芸謀監督)
『狙った恋の落とし方。』(二〇〇八年、馮小剛監督)
第五章 台湾映画と「別れの手紙」
『ヤンヤン 夏の想い出』(二〇〇〇年、楊徳昌監督)
『海角七号—君想う、国境の南』(二〇〇八年、魏徳聖監督)●
エピローグ 映画が癒す戦争のトラウマ

吴天明《老井》『古井戸』

《老井》『古井戸』は吴天明監督の1987年の作品。

黄土高原の村では、長年にわたって水を求めて井戸を振り続けてきた。しかし、成功せず、多くの人命が犠牲になっていた。男兄弟の中で育った孙旺泉(张艺谋)と、高考に落ちて村に留まっている優秀な娘・巧英(梁玉瑾)はお互いに惹かれあう。しかし、孙旺泉は、金銭のため家族によって寡婦(吕丽萍)に嫁がされることになる。孙旺泉はその決定に反対したが、父が井戸を掘っている最中に事故死したため受け入れざるを得なかった。旺泉は県の地質学学習班に参加して、学問を修めた後、再び井戸掘りに関わる。しかし、事故が起きて旺才が亡くなる。その上、巧英と旺泉は土の中に閉じ込められて死を覚悟、愛し合う。その後二人は救出された。その後、旺泉を大金を払って機械を使うことにより、さらに井戸を掘るかどうか村人たちに尋ねる。万水爷は自分の棺桶を、喜凤は自分の家のミシンを差し出す。さらに、巧英は自分の嫁道具をを全て差し出して村を去る。その後、井戸から水が出た。村人たちはその苦難の歴史を石碑に刻んで記念した。

同名の小説をもとにしているそうです。

物語の軸になっているのは、井戸掘りという村を挙げての一大事業と、孙旺泉・巧英の恋愛です。井戸を掘るために長年にわたって苦労してきた村人たちの努力は、最後に村人たちの多大な犠牲によって、ようやく報われることになります。しかし、孙旺泉・巧英の二人は結ばれることはありません。

张艺谋が主役を演じていることで有名な作品です。農村の男という役柄を演じきっています。

葬式など、村の風俗などが映されているので非常に興味深いです。そして、物語のクライマックスである集会の様子も、さまざまな人の顔がうつされていて、みごたえがありました。


《老井》(1987■吴天明■张艺谋、梁玉瑾、牛星丽、吕丽萍■『古井戸』)

四方田犬彦『アジアのなかの日本映画』

『アジアのなかの日本映画』は、四方田犬彦による日本の映画に関する評論をまとめたもの。

1 アジアのなかの日本映画
2 日本映画とマイノリティの表象
3 一九九〇年代の日本映画
4 日本映画の海外進出

から成り立っています。

個人的にとくに興味深かったのは、「1 アジアのなかの日本映画」。

日活のアクション映画が、日本のみならず世界で評価された、ということを四方田犬彦が鮮やかに明らかにしていきます。韓国への影響(韓国では密かに、オマージュ作品が作られた)、ヨーロッパ・ヌーヴェルヴァーグへの影響、台湾への影響(侯孝賢も小林旭をみていた)、香港への影響(日活アクションから香港ノワールへ)などなど。

「3 一九九〇年代の日本映画」では、旧満映撮影所への旅のことなども触れています。

その他、在日、水俣、任侠などを取り上げた映画に関して。

 また「4 日本映画の海外進出」の部分では伊丹万作の日本映画の海外進出計画への考察、日活銀座、武満徹と映画音楽、淀川長治、ヴィデオへの映画への影響などに触れています。どのエッセイもみな映画に対する思いがあふれていて興味深いです。知らないことが多かったので勉強になりました。

日活が銀座の舞台をまるごとつくって維持したというはなし、すごい、と感じました。

 ヴィデオが映画評論を変えたという記述を見て隔世の感があります。今ではネットで多くの映画を見ることができます。

 ピンチョンにも言及。四方田犬彦の視野の幅広さを思い知りました。

 映画を見たあとで改めて読み直したいです。

周星馳、李力持《食神》

「食神」と称されるコック史提芬周(周星驰)は、利益だけを追求して傍若無人な振る舞いを繰り返し、事業を拡大。しかし、出資者(吴孟达)に裏切られて、史提芬周はマネージャー・唐牛に「食神」の称号を奪われて破産、落ちぶれます。その後、史提芬周は、街角で働く火鸡(莫文蔚)らに助けられて大ヒット商品「爆浆濑尿牛丸」をつくり、再起。彼は中国で、唐牛の学んだ学校を探します。しかし、唐牛たちは史提芬周を殺そうとして刺客をはなち、火鸡が彼を庇って銃弾に倒れます。その後、提芬周はその「学院」が実際は少林寺の厨房であると知り、一ヶ月そこで学びます。その後、香港に戻り、「食神」を巡る勝負では、火鸡のつくってくれた“黯然销魂饭”で唐牛に対抗。大会の審判・薛家燕が吳孟達の脅迫のため唐牛が勝者だと宣告した時、観音菩薩があらわれて史提芬周が罰を受けている神仙であるという事実を伝えて、その勝利を宣告。その年のクリスマス、史提芬周の前に実は生きていた火鸡があらわれます。しかも整形して、もとの美しさを取り戻していました。

強烈なブラックユーモアに満ちた作品。

苦笑を誘うようなさまざまなネタが詰め込まれています。たとえば、料理のネーミング、史提芬周の人を人とも思わない振る舞い、醜い容姿にさせられている火鸡、少林寺における師匠の男色、少林寺における史提芬周に対する扱い、などなど。


《食神》(1996■周星馳、李力持■周星馳、莫文蔚、谷德昭、薛家燕、吳孟達■)