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中国文学映画関連 備忘録

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四方田犬彦、倪震『日中映画論』

『日中映画論』は、日中の様々な映画に対する四方田犬彦、倪震の評論をまとめたもの。

大島渚、謝飛(シェ・フェイ)、北野武、張芸謀(チャン・イーモウ)、塚本晋也、賈樟柯(ジャ・ジャンクー)といった映画監督が論じられています。

とくに興味深いと感じたのは張芸謀と賈樟柯の部分。賈樟柯の映画には雑音が多い、という指摘はその通りだと感じました。

また、その他の監督の作品に関しても見てみなければ、と思いました。


以下・目次
わたしはいかにして映画マニアとなり、次に映画研究者となったか。(四方田)
映画研究がわが人生の転機となった(倪)
・大島渚論 性と政治の融合と分離(倪)/日の丸とペニス(四方田)
・謝飛論 生めよ増やせよ(四方田)/ソフトな東方的情緒の展示(倪)
・北野武論 天使と悪魔の子(倪)/道化とその後(四方田)
・張芸謀論 父殺しに至るまで(四方田)/仮面の裏側(倪)
・塚本晋也論 異生物とサイコホラー(倪)/恐怖という情熱(四方田)
・賈樟柯論 雑音とアイロニー(四方田)/田舎町への永遠の思い(倪)
映画批評をめぐる対談(四方田×倪)
倪震から四方田への三つの質問
四方田から倪震への三つの質問
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王家卫《一代宗师3D》『グランド・マスター』

《一代宗师3D》『グランド・マスター』は王家卫監督による2013年の映画。

中華武士会会長の宫宝森(王庆祥)は北方から広東省の佛山に来て、南方の武術人と切磋琢磨を望む。叶问(梁朝伟)は推挙されてその勝負に望む。宫宝森の娘・宫若梅(章子怡)は叶问を破る。日本の侵略の後,宫宝森の子弟だった马三が裏切り宫宝森を殺す。宫若梅は復讐を誓って結婚を諦める。そして、宫若梅は马三と戦い,最終的に勝利するが、同時に重大な内傷を負う。叶问は1950年で香港で弟子をとるようになり、宫若梅と再び巡り合う。

武侠映画。

物語は叶问(梁朝伟)と宫若梅(章子怡)の関係を軸にして進んでいきます。

王家衛らしい映像美が随所に発揮されています。タバコをアップでうつしだす場面などが印象に残りました。その他、戦闘シーンも非常に美しく描写されています。戦闘のシーンがある意味、ダンスのようです。

基本的には史実に基づいているそうです。随所に史実に関する説明が挿入されます。また、その当時のものと思われる映像も挿入されて雰囲気を醸し出しています。

独特の言い回しなども、相変わらずです。ただ、個人的には王家衛の昔の作品の方がより王家衛らしさがあり面白く感じました。

《一代宗师》(2012■王家卫■梁朝伟、章子怡、赵本山、张震、小沈阳■『グランド・マスター』)

徐峥《人再囧途之泰囧》

《人再囧途之泰囧》は徐峥監督による2012年の映画。

成功したビジネスマン・徐朗(徐峥)は油の体積を増やす「油霸」を発明、さらに開発しようとしますが、ビジネスパートナー高博(黄渤)は「油霸」をフランス企業に売ろうとします。そして二人は対立、それぞれタイに向かった最大の株主・周扬から承諾を得ようとします。徐朗は家庭を顧みないため妻から離婚を要求されますが無視してタイへ。高博も、フランスでの妻とのハネムーンを切り上げてタイへ。徐朗は途中で、母親思いの青年・王宝(王宝强)と出会い、パスポートを紛失したので王宝を利用してタイを移動しようとします。その後、タイを舞台として、徐朗、王宝コンビと高博の追跡劇が始まります。最終的に、三人は周扬の委任状に辿りつきますが、徐朗は権利を放棄、さらに家族との関係をないがしろにしたことを改悛します。帰国後、徐朗は、王宝を家に招き、范冰冰とともに写真をとらせてあげます。
コメディ映画。

中国でメガヒットを記録したそうです。

非常に面白いです。ただ《人在囧途》のほうがよりテーマが明確だったようにも思います。そして、王宝强の役柄も《人在囧途》の時の方が王宝强自身にあっていたのではないかと若干感じました。

タイを舞台にしたことを最大限に利用して、タイのさまざまな風土をバックに追跡劇を展開していきます。その点は非常に演出が巧みだというふうに感じました。


《人再囧途之泰囧》(2012■徐峥■徐峥、王宝强、黄渤、陶虹、范冰冰■)

关锦鹏《人在纽约》(《三个女人的故事》)

《人在纽约》(《三个女人的故事》)は关锦鹏監督による1989年の映画。

《三個女人的故事》は香港、台湾、大陸からアメリカニューヨークに渡ってきた三人の女性の物語です。趙紅は大陸からアメリカに移り住み,新生活を開始します。しかし、アメリカに母親を迎えようとしながら夫の理解を得られず、悩みます。黃維屏は台湾からアメリカに移り住んですでに十数年になります。すでにアメリカ生活に馴染み、外国人のボーイフレンドもいます。そして、舞台芸術の方面で活躍しようとしています。李鳳嬌は香港からアメリカに移り住み、家族とともにアメリカでレストランを開きます。李鳳嬌は家族の心配を無視して、男性を相手にせず、女性だけを愛します。

女性の立場から、社会のなかで生きる女性のありかたを描き出す、というスタイルをとっています。結婚してこそ一人前、というような見方に対して女性はどのように振る舞うべきか、という点など非常に考えさせられる作品です。

女性だけで集まって盛り上がる場面など、非常に印象に残ります。

また年老いた家族とともに暮らす中国の文化と、家族とともに暮らさないアメリカの文化の差異などが摩擦の原因となっている点も注目に値するように思いました。

遠くから、ニューヨーク全体をうつす最後の場面は感動的です。


《人在纽约》(1989■关锦鹏■张艾嘉、张曼玉、斯琴高娃■『Full Moon in New York』)

余华《爱情故事》

《爱情故事》は余华の小説。
 
1989年3月23日。
 
ある男女の関係の物語。二人は5歳の時から知り合っていて最終的には結婚した。二人は、野原で愛し合う。そして妊娠したかどうかを確認するため病院に赴くが、少年は事態の発覚を恐れて少女を遠ざけようとする。少女が妊娠したら自殺するしかないとまで少年は言う。そして少年は少女を一人で病院に向かわせる。結果が出て少女が妊娠していたと告げると少年は絶望に襲われる。男は置いた女と向き合う。男はお互いがお互いのことをあまりにも理解してしまったのではないかという。女は「あなたは私を追い出したいのだ」と泣きながら言う。男は「とても聞いていられない」という。男は「過去の出来事をともに追憶しよう」という。女は「最後の一回?」と尋ねる。男は「1977年の秋から始めよう」という。「40里も離れたあの場所でお前がすでに妊娠しているかどうか確認しに行った。あの時僕は本当に落ち込んでいた」と。女は「落ち込んでいなかった」という。女は「これまで出会ってきた中で、今始めてあなたは落ち込んでいる」という。
 
老いた男の回想という方式で物語は語られていきます。過去と現在が交錯しながら文章が進んでいきます。特に問題にされるのは妊娠の検査に行く場面。
 
いわゆる「妊娠小説」。
 
責任を引き受けようとしない、神経質な男が、物語の主人公となっています。