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中国文学映画関連 備忘録

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张艺谋《十面埋伏》『LOVERS』

《十面埋伏》『LOVERS』は张艺谋監督による2004年の映画。

唐代末期、朝廷が腐敗して民間に多くの反政府組織が出現した。飞刀门はその中でもとくに巨大であり、棟梁・柳云飞の死後も勢力を拡大していた。奉天县の二人の捕头、刘捕头(刘德华)と金捕头(金城武)は飞刀门を倒すことを画策。刘捕头は牡丹坊で飞刀门の前棟梁の娘と思われる小妹(章子怡)を捕える。そして、金捕头は義侠心溢れる人間を装って小妹を救出する。実は金捕头は飞刀门に探りを入れて一網打尽にすることを画策した。しかし、金捕头と小妹は逃避行の中で惹かれあっていく。最終的に金捕头は飞刀门に捕まる。実は、刘捕头は飞刀门のスパイであり、小妹と刘捕头は惹かれあっていた。最終的に小妹は金捕头を選び、そのこと刘捕头は小妹に重傷を負わせる。そして金捕头と刘捕头は死闘を繰り広げる。

三角関係を描いた映画。

背景として政府と反政府組織の壮大な暗闘が描かれていきますが、物語自体は、三人の男女の関係に収斂していきます。

それぞれの人物たちの本音と建前が様々に入れ替わります。さらに、物語が進んでいくごとに、それぞれの人たちの本当の正体が明らかになり、相互の関係性が変化していきます。その点が非常に面白いです。

また、風景が非常に美しいです。


《十面埋伏》(2004■张艺谋■刘德华、金城武、章子怡■『LOVERS』)
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黒澤明『羅生門』

『羅生門』は黒澤明監督による1950年の映画。

ある男性の死を巡って、その場に居合わせた人たちの証言がことごとく食い違いを見せる物語。

芥川龍之介の「藪の中」と「羅生門」を下敷きにしているそうです。

日本映画の全盛期の先駆けとなった作品として評価されています。海外では非常に高く評価されました。

 今見ても全く古びていないように感じられました。


『羅生門』(1950■黒澤明■三船敏郎、森雅之、京マチ子、志村喬)


周星驰《功夫》『カンフーハッスル』

《功夫》『カンフーハッスル』は周星驰監督による2004年の映画。

物語の舞台は1940年代の上海。斧头帮が街を牛耳っていた。阿星(周星驰)はマフィアになることを夢見るが毎回失敗する。斧头帮を詐称して,マフィアからも見放された貧民窟・猪笼城寨で悪さをする。その結果、阿星は貧民窟の人々に殴られる。その後、阿星の投げた偽の斧が発端となり、斧头帮が街に因縁をつけて攻め込む。しかし、三人の達人(五郎八卦棍、洪家铁线拳、十二路谭腿)によって斧头帮は撃退される。その後、斧头帮は二人のカンフーの達人に依頼して、三人の達人を殺害する。しかし、猪笼城寨の家主とその妻・包租公、包租婆は実はカンフーの達人であり、太极拳と狮吼功で二人の功夫の達人を倒す。その後、斧头帮は阿星を利用して精神病院から武林第一の達人とされる“火云邪神”(梁小龙)を連れ出して、包租公、包租婆と戦わせる。火云邪神と包租公、包租婆の戦いは伯仲するが、阿星は突如として斧头帮を裏切る。阿星は火云邪神に叩きのめされるが包租婆と包租公に救われる。その後、覚醒した阿星は「如来神掌」で、「蛤蟆功」を用いる火云邪神を倒す。

周星驰らしさが全面に打ち出されたカンフー映画。

貧しくみすぼらしい人間や、普段は情けない人間が、実はカンフーの達人というパターンが活用されています。戦闘シーンはある意味滑稽ですが、非常に迫力があります。中国の武侠の物語を、現代版として蘇らせているような印象を受けました。

喜劇の要素も存分に発揮されています。

とくに気に入ったのは周星驰が包租婆に向かって何度もナイフを投げつけようとして、ことごとく失敗、自分にナイフが突き刺さる場面。


《功夫》(2004■周星驰■ 周星驰、陈国坤、林子聪、黄圣依、释行宇、元华、元秋■『カンフーハッスル』)

陈果《香港有个荷里活》『ハリウッド★ホンコン』

《香港有个荷里活》『ハリウッド★ホンコン』は陈果監督による2002年の作品。

香港に残された最後の木造家屋地区・大磡村に住む朱家は、焼き豚を売って生活している。大磡村の向かいにはハリウッド広場がある。チンピラの阿强は出会い系サイトを開設して同棲相手に金を取らせて生活していた。阿强はあるときインターネットで上海天使を名乗る红红(东东)と知り合い、金を払ってセックスする。朱家の阿细は东东と出会い、親友になり、家にも招く。东东の出現によって,朱家に生气が生まれる。阿强と阿明はそれぞれ东东と一夜を過ごした。しかし、その後、未成年の少女に対する性的暴行にたいして5万ドルを支払えと要求する手紙を受け取る。阿强は拒否したため、襲われて右腕を切られる。その上、間違いから違う人の左手を縫い合わされる。さらに、利息を含めて15万ドルの請求が来る。阿强と阿明は阿细から东东の部屋を聞き出して、襲撃しようとする。しかし、阿细は东东に危機を知らせるため、屋根に上って「走」とかいた旗を振る。阿强と阿明が部屋に踏み込むとすでに誰もいなかった。

寓話的な作品。

陽気にふるまってさまざまな男性を誘惑する东东、まるまると太った朱家の三人、チンピラの阿强など登場人物のキャラクターが極めて強烈です。もっとも目を引くのは上海から来たと語り、体を売る东东。こどもといっしょに過ごしているときにはその明るさが存分に発揮されます。

周迅の声は若干低く特徴的です。 

生と死、身体の切断、人間と動物の境界など重大な出来事が陽気に、軽々と越えられていくような印象を受けます。

 香港のさまざまな風景がうつしだされています。とくに高層ビルと、バラック小屋の街角の対比はすばらしいです。香港という場所だからこそ、成立した物語のように思えます。
 
  
《香港有个荷里活》(2002■陈果■陈英明、周迅、黄又南■『ハリウッド★ホンコン』)


贾樟柯《任逍遥》『青の稲妻』

《任逍遥》『青の稲妻』は贾樟柯監督による2002年の作品。

二人の少年・小季と斌斌は毎日あてもなくバイクに乗って放浪している。あるいは娯楽室で時間をつぶしている。小季はダンサー巧巧(赵涛)に惹かれる。しかし、巧巧には彼氏がいた。彼氏は街のゴロツキであり、金貸しをしていた。小季は彼氏の存在を無視して巧巧に接近するが、その結果制裁を受ける。斌斌は母親の意向に従って軍隊を目指すが、健康診断の結果軍隊に入ることができない。一方、斌斌の彼女は北京に行って大学で勉学に励み、未来に踏み出そうとしている。彼らのいる山西大同は北京から遠かったが、高速道路が通ることにより状況は変化しようとしていた。斌斌は金を借りて彼女に電話を送り、さらに風俗に行く。その後、小季と斌斌は銀行強盗をしようとするが失敗する。

地方都市の若者を描いた映画。

中国の地方都市に生きる若者たちの閉塞感が描き出されています。

贾樟柯らしい長回しによって映画全体が構成されています。とくにバイクで坂を上ろうとして何度も何度も何度も失敗する場面は、映画全体を象徴しているような印象を受けました。

未来に希望を見出すことのできない人間と未来に向かって踏み出していく人間の対比が非常に鮮明です。たとえば、斌斌と、斌斌の彼女の関係など。斌斌の彼女が北京の大学に受かれば、その二人の関係に続きがないだろうということは明らかです。斌斌は、面白みのない地方都市に取り残されることになります。

また、ニュース、アニメ、放送などが画面の中に巧みに挿入されています。


《任逍遥》(2002■贾樟柯■赵涛、赵维威、吴琼、王宏伟■『青の稲妻』)