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中国文学映画関連 備忘録

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大東和重『郁達夫と大正文学―“自己表現”から“自己実現”の時代へ』

大東和重『郁達夫と大正文学―“自己表現”から“自己実現”の時代へ』は、日本に長く滞在した中国の小説家・郁達夫が日本文学からどのように影響を受けたかを考察した一冊。

郁達夫という人がどのような日本文学を読み、どのように影響を受けたかということだけではなく、郁達夫の読書遍歴を通して、大正文学の特徴を明らかにしよう、という野心的なたくらみがなされています。著者が大正文学の特徴としてあげるのは、〈自己実現〉。

作者の身辺の出来事を題材にするような、告白を特徴とする文学が非常に流行して、それが郁達夫に決定的な影響を与えたという指摘には説得力があります。

文学研究は、広範な読書によって支えられている、ということがよくわかります。

当時、小説家は、今でいうところのアイドル・芸人だったのかもしれない、と読みながら感じました。だからこそ、小説はある意味ゴシップとして消費されたのではないかと思います。


序 章 郁達夫と大正文学――第一次大戦後の文学と〈自己実現〉
第I部 〈自己表現〉の時代の中で
第1章 〈自己表現〉の時代――『沈淪』と五四新文化運動後文学空間の再編成
第2章 日本留学時代の読書体験――学校体験・留学生活・日本語・外国文学
第II部 日露戦後から第一次大戦後へ
第3章 田山花袋の受容――『蒲団』と『沈淪』
第4章 志賀直哉の受容――自伝的文学とシンセリティ
第III部 〈自己実現〉の時代へ
第5章 大正教養主義の受容――自我をめぐる思考の脈絡
第6章 オスカー・ワイルドの受容――唯美主義と個人主義
第7章 大正の自伝的恋愛小説の受容――『懺悔録』・『受難者』・『新生』
終 章 比較文学と文学史研究
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周星驰《美人鱼》

《美人鱼》は周星驰監督による2016年の映画。

富豪・刘轩(邓超)と、人魚・珊珊(林允)の物語。刘轩が開発を推し進めて人魚の生息地を破壊するため、珊珊は刘轩を殺すため接近します。しかし、二人はともに一日を過ごすうちに惹かれ合います。そこに刘轩を愛する女富豪・李若兰(张雨绮)と珊珊を想うタコ男・八哥(罗志祥)の思惑が絡み合い、物語はすすんでいきます。

周星驰監督の最新作をようやく見ました。

環境保護がテーマになっている中国映画。周星驰の監督作品は、毎回、異なる方向性を試しているような印象を受けます。《美人鱼》は恋愛が物語の軸になった楽しい作品ですが、テーマ自体は骨太で、シリアスな部分も多いです。

ただ、周星驰の映画らしく、コミカルな場面は数多いです。とくに人魚・珊珊(林允)とタコ男・八哥(罗志祥)がそれぞれ刘轩(邓超)を倒そうとして、四苦八苦する場面などは定番の展開ですが、面白いです。


《美人鱼》(2016■周星驰■邓超、林允、张雨绮、罗志祥■)

周星驰《西游・降魔篇》

《西游・降魔篇》は周星驰監督による2014年の映画。

ある水村に、人を喰う妖怪が現れます。玄奘(文章)は村人と協力して、妖怪を陸におびき出して退治しようとします。そして、最終的にこどもの歌で妖怪の真善美を呼び覚まそうとしますが、失敗します。偶然現れた段姑娘(舒淇)は、力で妖怪を退治しました。その後、玄奘は高家庄にいき、今度は猪の妖怪を退治しようとします。その時、再び、段姑娘に救われます。二人は協力して猪の妖怪と闘いますが、力及ばず逃亡します。その後、段姑娘は玄奘に告白しますが、玄奘は相手にしないで逃げます。その後、玄奘は師匠の言葉を受けて、洞窟に閉じ込められている孙悟空(黄渤)の力を借りて猪の妖怪を退治することにします。玄奘は、孙悟空と段姑娘の協力で、猪の妖怪を退治します。しかし、玄奘が誤って、孙悟空を解放してしまいます。孙悟空は多くの魔物祓いや、段姑娘を倒します。しかし、孙悟空は、最終的に仏の力と玄奘の力に敗れます。そして、玄奘の西域を目指す旅が始まります。

アクション映画。

三蔵法師による西域への旅が始まる前の物語です。西遊記の設定を巧みに利用しながら、独自の物語をつくりだしています。その点が非常に面白いです。

笑いあり涙ありの映画となっています。

とくに舒淇の演技が面白いです。戦闘シーンの迫力と、コメディシーンの面白さなどは対照的です。また、黄渤の怪演も光ります。

ただ、周星驰自身が出演しないので、若干寂しさも感じます。


《西游・降魔篇》(2013■周星驰■舒淇、文章、黄渤、罗志祥■『西遊記〜はじまりのはじまり〜』)

张艺谋《英雄》『HERO』

《英雄》『HERO』は张艺谋監督による2002年の映画。

戦国末期、秦王(陈道明)が中国全土を手に入れようとしていた。剣士・无名(李连杰)、残剑(梁朝伟)、飞雪(张曼玉)、如月(章子怡)、长空(甄子丹)らは仇である秦王を殺すことを目指す。无名は、长空、飞雪、残剑を倒したという作り話によって、秦王に十歩まで迫る。しかし、残剑はかつて秦王が天下を統一する志を抱いていると知り、天下太平のために秦王暗殺を放棄していた。そして、无名も残剑に影響されて、あと一歩まで迫りながら暗殺を放棄する。そして、殺される。一方、飞雪は残剑を倒した後、自害する。

中国の映画史上に残る大作。

映画の中では、背景として、藍、緑、紅、黒、白などの五色が全面的に用いられています。色彩にあふれた背景、華麗な戦闘シーンなどには目を奪われます。
 
その後、张艺谋は歴史を題材にした作品を次々と発表して成功を収めました。

登場する俳優たちは、皆第一線で活躍していた人たち。とくに香港の俳優が多いです。とくに印象に残るのは、张曼玉の存在など。王家衛の作品を連想させられます。


《英雄》(2002■张艺谋■李连杰、梁朝伟、张曼玉、陈道明、章子怡、甄子丹■『HERO』)

张艺谋《一个都不能少》『あの子を探して』

《一个都不能少》『あの子を探して』は张艺谋監督による1999年の映画。

13歳の少女・魏敏芝は、高老师の代理として一ヶ月授業を行うことになります。高老师は魏敏芝が幼いため心配しますが、他に代理は見つかりませんでした。水泉小学にはもともと3~40名の生徒がいました。しかし、新学期ごとに生徒は去り,残されたのは28人だけでした。高老师は魏敏芝に対して、生徒の面倒をよく見て、一人誰かが去るようなことはあってはならないと言います(一个都不能少)。魏敏芝は毎日、生徒に黒板の文字をうつさせます。しかし、生徒たちは全く先生の話を聞きず、ふざけます。魏敏芝は諦めて、教室を締め切り、ドアを見張るだけでした。十歳の张慧科は家族が借金したため街に出稼ぎに行きます。魏敏芝は高老师の言いつけを守り,张慧科を連れ戻すことを決心します。そして、生徒たちとともにバス代を稼ぐため努力します。その後、魏敏芝は単身街に乗り込みます。しかし、テレビ局は、特別に魏敏芝を農村の教育問題に関する特集で出演させます。その結果、张慧科は見つかり、さらに水泉小学には寄付として多くのお金やチョークが届けられました。

施祥生の小説《天上有个太阳》を改編した作品だそうです。

とくに魏敏芝がテレビの前で言葉を紡ぎだす場面は非常に心を打たれます。当初喋り出すことができず、何度も何度も促された後、言葉を発します。

時間をたっぷりと使った映画。

様々な雑音が背後で響くことにより、都会の喧騒が表現されています。

《一个都不能少》(1999■张艺谋■魏敏芝■『あの子を探して』)