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中国文学映画関連 備忘録

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余华《空中爆炸》

《空中爆炸》は余华の短編小説。

1995/12/17

私にはすでに妻がいます。一方、唐早晨は未婚であり、毎回異なる女性を連れて私の家を訪れます。ある時、唐早晨が私に対して結婚のつまらなさを語るので、妻が鍋を持って家から出ていくように告げました。そして、唐早晨は長らく家を訪れませんでした。久しぶりに唐早晨が現れた時、彼は既婚の女性に手を出したため、その夫が家の前にいて困っているので助けて欲しい、といいます。私は妻の同意を得た後、唐早晨を助けるため家を出ます。その後、唐早晨は、陈力达、方宏、李树海に助けを乞います。しかし、途中で唐早晨は他の女性に目を奪われて去っていきます。私と陈力达、方宏、李树海は唐早晨に呆れて罵りますが、久しぶりに集まったので夜まで飲み明かすことにします。

結婚をきっかけとして、家庭を築くこととなった男性たちが、遊び暮らしていた若い頃を懐かしむ物語。

追憶が物語の主題のようです。

ちなみに、空中爆炸とは二つの酒瓶を空中で衝突させて粉砕する遊びのこと。
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中国現代文学珠玉選[小説1]収録作・凌叔華「刺綉の枕」 廃名「桃畑」 馮至「伯牛、疾あり」、 施蟄存「梅雨の夕べ」

むかし読んだ時とは、それぞれ印象が異なるので面白かったです。

凌叔華「刺綉の枕」
掌編。刺繍に励むお嬢さんとそのお手伝いと、その娘の物語。苦労して丹念につくりあげたはずの刺繍が、二年後、切れ端となってかえってきます。そして、御嬢さんは二年前のことを思い出しながら呆然とします。


廃名「桃畑」
非常に不思議な小説。桃畑を営む酒浸りの父と病弱な娘の物語。幻想と現実が入り混じっています。物語全体が誰の視点から綴られているのかもよく分かりません。さまざまな欠片を寄せ集めて、小説をつくりあげたかのようです。

原文で読んでみたいと感じました。実験的な作風といえるのかも知れません。

馮至「伯牛、疾あり」
馮至が、孔子と伯牛のエピソードを短編小説に仕立て上げたもの。孔子の非常に優れた弟子・伯牛は、美人と結婚した後、病(ハンセン病?)を患います。そして、妻と別れて、人々から口々に罵られながら死のうとしています。孔子は伯牛の手をにぎり、なんという運命だと嘆きますが、どうすることもできません・・・

歴史小説。


施蟄存「梅雨の夕べ」
ある既婚の男性が、大雨の中で初恋の人に似た女性と出会い、自分の傘にいれて、途中まで送り届ける、という物語。男性の思考の流れにそって物語が構成されていて、非常に面白いです。けっこう、くどくどとしていますが、その点が笑いを誘います。



余华《朋友》

《朋友》は、余华が執筆した短編小説。

1998/10/7

力強さのため町で恐れられている昆山と、その昆山の妻を殴った石刚の物語。物語の語り手は、11歳の少年。昆山は、自分の妻を石刚が殴ったと知ります。そして、面子の問題だといって、石刚を懲らしめにいきます。石刚はなかなか風呂からでてきません。少年は浴場まで様子を見に行きました。程なくして石刚が出てくると、二人の戦いが始まります。昆山は包丁、石刚は濡れたタオルを使いました。結果として石刚が去り、痛み分けに終わります。その後、少年は、二人が仲良く語り合っている場面に遭遇して、驚きます。

暴力が扱われている小説。

余華自身の記憶が題材になっているようです。

中国現代文学珠玉選[小説1]収録作・老舎『黒李と白李』 、艾蕪『山峡にて』、 丁玲『霞村にいた時』

老舎『黒李と白李』
黒李と白李兄弟の物語。二人は、一人の女性を愛します。黒李は白李のために女性と縁を切りますが、女性はそのことを根に持ち、白李と縁を切ります。そして、白李は黒李を恨み、文句を言います。さらに、分家まで求めるようになります。しかし、黒李は弟を思い、決断できません。

黒李は古い人、白李は新しい人です。たとえば車夫への関わり方が異なります。黒李は車夫の脚を労わるだけですが、白李は車夫を友人とみなして、汽車ができて車夫の仕事が失われることまで見越して心配します。白李は汽車破壊に関与します。その後、黒李は白李の身代わりとして銃殺刑になった。
余華『兄弟』を連想しました。とくに印象に残るのは、兄の自己犠牲。


艾蕪『山峡にて』
本を手離さない青年が、盗賊の一団と一時生活をともにする物語。青年は、盗賊の盗難を手伝います。しかし、盗賊が、重傷を負った仲間を河に投げ捨てる現地を見て、別れようとします。しかし、盗賊の頭の娘は青年をはなそうとしません。その後、役人と兵士の一行が現れて娘が危地に陥った時、青年は機転を利かせて農民を装い、危機を逃れます。その翌日の朝、起きると盗賊はすでにおらず、青年はただ一人残されていました。

ラストで描かれる、盗賊に取り残された青年の寂寞など、非常に味わいがあります。

風景描写も非常に美しいです。原文でも読んでみたいと感じました。



丁玲『霞村にいた時』
著者自身らしき女性が休息のため二週間ほど霞村に滞在した時、出会った力強い女性・貞貞の物語。貞貞は、日本軍に捕まり、長く日本軍のもとで生活しました。村人たちはその女性が日本人将校の奥様になり、うまく立ち回った、とみなして見下しています。それでも、村には貞貞のことを支えようとする青年がいました。しかし、貞貞は最終的に延安にいき、強く生きていこうと決断します。

抑圧された女性を扱った作品。

戦争下で抑圧を受けた女性がその抑圧とどう向き合ったのか、という点を扱った作品。ただ、語り手はあくまで傍観者であり、女性の内心に踏み込むことはありません。その点は誠実です。

ラストでは、共産党に参加することによって強く生きていく、という選択が暗示されます。

中国現代文学珠玉選[小説1]収録作・沈従文「夫」、茅盾「林商店」、巴金「月夜」

『中国現代文学珠玉選[小説1]』は、中国現代の小説家による短編小説の翻訳。15編を収録。

沈従文「夫」
農村出身の男女に物語。町に出て船で男に侍り金を稼ぐ妻と、農村から妻に会いに来る夫。夫は、以前とは変わってしまった妻に戸惑い、その関係に苦慮します。妻が様々な男を相手にするので、夫はふてくされて最終的には大泣きします。紆余曲折はありますが、二人は最終的に農村に帰ることを選択します。

様々な対比が印象的です。農村は純朴かつ善、都市は猥雑かつ悪という図式になっているようです。
茅盾「林商店」
個人商店を開いている林商店が潰れる物語。林氏、林夫人の間には娘が一人いて三人で真面目に商売に励んでいます。しかし、上海で巻き起こる戦争や、賄賂や娘との婚姻を求める局長の抑圧によって資金繰りに苦しみ、商売は立ち行かなくなります。そして、最終的に夜逃げすることになります。

茅盾は、林商店の破産という社会の一場面を切り取ることにより、その背景にある様々な出来事や問題を描き出します。物語のラストでは、林商店が破産することにより、出資していたほかの貧しい人にも被害が及ぶことが描き出されています。その描写が非常に秀逸です。

また、物語自体は非常に読みやすく、理解が容易です。

巴金「月夜」
阿李の船は、夜中、町へ向かう人たちを運びます。客たちはみな到着しますが、普段遅刻しない根生があらわれません。様子のおかしい根生の妻があらわれます。阿李は妻を追っていき、問い詰めます。妻は、根生が地域の有力者に反逆したため捕まったに違いないといいます。皆は半信半疑でしたが、ほどなくして、川に銃殺されたらしい根生の死体が浮かび上がります。
物語が繰り広げられるのは、満月の夜、睡蓮の花が満ちる川辺。情景が非常に思い浮かべやすいです。

3篇は、ともに抑圧される善良な人々の運命が、物語の主題になっています。